マングローブ

定義

マングローブとは、熱帯および亜熱帯地域に広がる河口や汽水域の塩性湿地で、高木や低木から成る森林や植物群落を指します。この植物群は英語で「mangrove」と呼ばれ、漢字では「紅樹」と表記されます。マングローブの集合体は「マングローブ林」と呼ばれ、そこでは特有の生態系が形成されています。

分布

マングローブ林は世界126の国や地域に見られ、その総面積は約1520万ヘクタールと推定されています。オセアニア、東南アジア、インド亜大陸、アフリカ、南アメリカの沿岸地域を中心に分布し、日本では南西諸島全域と九州南部に自生しています。しかし、近年の開発や伐採により、多くのマングローブ林が減少しています。

語源

「マングローブ」という言葉は、マレー語の「mangi-mangi」と英語の「grove」を組み合わせたもので、潮間帯の樹木を指します。このため、マングローブは「森林全体」と「樹木の種」を両方表すため、しばしば混乱を招きます。一般に、マングローブ林と呼ばれる植物群落を区別して使われます。

成立条件

マングローブ林は中等潮位から高潮位にかけての環境で成長します。宮城豊彦によると、その立地は主に3つの型に分類されます。
1. デルタ・エスチュアリ型 - 河口域で形成される干潟。
2. 砂州・浜堤-ラグーン型 - 静穏なラグーンや湿地内の干潟。
3. 干潟・サンゴ礁型 - 島やサンゴ礁によって形成された干潟。

これらの環境では、泥質が多く、栄養豊かな土壌が形成され、そのため多様な植物が成長します。また、泥の中に酸素が不足するため、特有の呼吸根が発達しています。

生態系の特徴

マングローブは高度に生産性があり、多くの生物が活動する場所です。樹木が密に生い茂ることで、さまざまな動物への隠れ家を提供し、これによって多様な生物相が形成されます。しかし、複雑な構造は人間のアクセスを困難にします。さらに、底質の多くは嫌気性であり、分解物の蓄積が見られます。

マングローブ植物の主要種

マングローブを構成する植物は70-100種に及び、主にヒルギ科、クマツヅラ科、ハマザクロ科が含まれます。日本国内では、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギなどが主な種です。これらの植物は、特有の葉形状と呼吸根を持ち、大きな果実をつける特徴があり、親から新芽が出てから落下する「胎生種子」という特性も持っています。

半マングローブ

半マングローブとは、陸地でも成長できる性質を持つマングローブ関連の植生です。例として、ハマボウやハマナツメなどの種があります。これらは、潮間帯だけでなく干潟や砂浜でも生育可能です。

動物相

マングローブの生態系は、多様な動物を支えています。底生生物や魚類に加え、哺乳類や鳥類もこの環境を利用します。特に、潮が引いた際には多くの甲殻類が見られ、潮満ちる時間帯にはこれらの動物が隠れる場所を提供しています。さらに、マングローブは「命のゆりかご」と呼ばれるほど、生物多様性に富んでいます。

日本におけるマングローブ

日本では、鹿児島県の種子島や南西諸島、沖縄などでマングローブが自生しています。それぞれの地域には特有の種が分布し、特に沖縄には多様なマングローブ族が広がっています。近年では、マングローブの保護や再生が行われ、環境保護の一環として研究や実践が進められています。

マングローブの破壊と復興

世界各地でマングローブは壊滅的な影響を受けていますが、それに対抗する努力が続けられています。マングローブを再生し、植樹する取り組みがエジプトやサウジアラビアなどで進行中です。また、日本でも環境浄化を目指したマングローブの植樹活動が行われています。これらの活動は、マングローブの防災機能や生物多様性の維持に貢献しています。

マングローブは自然環境において重要な役割を果たしており、今後の保護と再生が急務です。

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