フィリピン大気地球物理天文局

フィリピン大気地球物理天文局（PAGASA）について

フィリピン大気地球物理天文局（Philippine Atmospheric, Geophysical and Astronomical Services Administration）、通称PAGASAは、フィリピンの国家気象機関です。PAGASAは、気象学、水文学、気候学、天文学、その他の地球物理学の分野における科学的・技術的活動を通じて、自然災害から国民を守り、国家の発展に貢献することを目的としています。PAGASAという名称は、タガログ語で「希望」という意味も持ちます。

歴史

マニラ気象観測所時代

1865年、マニラにマニラ気象観測所が設立され、イエズス会士のFrancisco Colinaが系統的な気象観測を開始しました。その後、イエズス会士のFederico Fauraが所長に就任し、観測所はフィリピンの気象の体系的な観測に力を注ぎました。1879年には、観測所が熱帯低気圧の接近を警告し、その精度が評価され、観測所の名声は確立しました。その後も、地震や地磁気の観測、時報業務、手旗信号による気象警報など、多岐にわたる活動を展開しました。1894年には、王室の支援を受け、観測所は公的機関として認められ、ルソン島各地に観測網を拡大しました。

アメリカ統治下の気象局

1898年のパリ条約でフィリピンがアメリカに割譲された後、マニラ気象観測所は1901年に内務省気象局に改編されました。その後、気象局は農務・天然資源省に移管され、活発な活動を続けました。その正確な台風予報と気象学、地磁気学、天文学の分野での科学的業績は、国際的にも評価されていました。特に、1908年に発表された極東天気図は、熱帯低気圧の予測に重要な役割を果たしました。

第二次世界大戦中

第二次世界大戦中、気象局は公共事業・通信省に移管され、フィリピン人職員のみで運営されるようになりました。しかし、1945年のマニラの戦いで庁舎が破壊され、業務が停止しました。観測機器や記録も失われ、戦後の再建が必要となりました。

戦後の再建期

戦後、気象局は1945年に再設置され、アメリカの支援を受けて再建が進められました。1949年には[世界気象機関]に加盟し、国際的な協力体制を構築しました。1963年には気象レーダーが導入され、1965年には国内の観測所が無線で接続され、独立した気象通信システムが形成されました。1968年には台風委員会に加盟し、1970年代には衛星気象学が導入され、台風研究計画が開始されました。

マルコス政権下のPAGASAへ

1972年、戒厳令下で気象局は廃止され、PAGASAが設立されました。PAGASAは国防省の管理下に置かれ、気象、洪水予報、地震、天文など、多岐にわたる分野で活動しました。1977年には台風緩和研究開発事務所と国家洪水予報事務所が設置され、防災体制の強化が図られました。1984年には国家科学技術庁に移管され、地震業務はフィリピン火山研究所に移管されました。

現代のPAGASA

1986年の民主化後、PAGASAは科学技術省の管轄下となり、主要5部門と支援3部門からなる組織構造となりました。2015年には現代化法が成立し、設備の近代化、人材育成、データセンターの設置などが進められました。2019年にはフィリピン宇宙局が設置され、PAGASAが担っていた宇宙計画は同局に移管されました。

PAGASAの活動

PAGASAは、以下の分野で活動しています。

気象予報・警報
洪水予報
気候・農業気象
天文
地球物理・宇宙科学
国家減災

台風の階級

PAGASAは、風速に応じて台風の強さを以下の階級に分類しています。

熱帯低気圧 (Tropical Depression)
熱帯性暴風雨 (Tropical Storm)
激しい熱帯性暴風雨 (Severe Tropical Storm)
台風 (Typhoon)
* スーパー台風 (Super Typhoon)

熱帯低気圧のフィリピン名

PAGASAは、北太平洋で発生した熱帯低気圧に対して、国際名とは別に独自の「フィリピン名」を命名しています。フィリピン国内では、このフィリピン名が一般的に使用されています。フィリピン名は、PAGASAの監視エリア内で熱帯低気圧が発生した場合、またはそのエリアに熱帯低気圧が進入した場合にのみ命名されます。必ずしも「台風」の勢力に達しているとは限りません。

まとめ

PAGASAは、フィリピンの気象、水文、地象、天象を観測・予測し、自然災害から国民を守る重要な役割を担っています。その歴史は、19世紀のマニラ気象観測所に始まり、様々な変遷を経て現在に至っています。PAGASAは、最新の科学技術を導入し、観測網の強化や予報精度の向上に努め、フィリピン国民の安全と発展に貢献しています。

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