手旗信号とは？意味をやさしく解説 - サードペディア百科事典

手旗信号について

手旗信号は、両手に持った旗を操作して、遠く離れた場所に情報を伝達する視覚的な通信手段です。特に海上で利用されることが多く、その歴史的背景や現代における活用について詳しく見ていきましょう。

手旗信号の成り立ち

手旗信号は、19世紀後半に日本海軍で考案されました。1893年頃、海軍の釜屋忠道とその部下である道本場声によって開発されたとされています。彼らはカタカナの裏文字を両手で示すことで、ほぼ正確に読み取れることを確認し、実用的な通信手段として海軍に提案しました。この「海軍手旗信号法」が正式に採用されたのです。

この手旗信号法は、その後陸軍にも採用され、さらに商船でも利用されるようになりました。1936年には、海軍と商船で共通の「日本船舶手旗信号法」が制定され、国内での標準的な通信手段として確立しました。第二次世界大戦後、海軍が解体された後も、手旗信号は日本の船舶信号として継続して採用されています。

無線通信などの発達により、商船や漁船での利用は減少しましたが、海上自衛隊では今でも基礎的な訓練として、入隊時に全員が手旗信号を習得します。また、海上保安庁や海洋少年団、ボーイスカウトなどでも、手旗信号の技術は訓練の一環として受け継がれています。

手旗信号の動作と基本

手旗信号では、右手に赤旗、左手に白旗を持ちます。これらの旗の組み合わせによって文字や数字、記号を表します。基本となる姿勢を文字の区切りとして、旗を動かすことで情報を伝達します。

日本の手旗信号では、受信者から見て正しい位置に見えるように、カタカナの形状を反転させた動きをします。ただし、「ス」は「寸」、「ネ」は「子」といったように、一部の文字は工夫された形になっています。

数字の送信方法

数字を送信する際には、0から9までの数字に対応した原画を使用するほか、数字を表す略語も使われます。例えば、1は「ヒ」、2は「フ」、3は「ミ」など、独自の略号があります。

その他の信号

手旗信号には、文字や数字だけでなく、様々な記号や通信を円滑に行うための信号があります。

手旗信号の通信方法

日本船舶信号法に基づいた手旗信号の通信手順は以下の通りです。

1. 送信開始
送信船は、まず起信形象と受信船の名前を、受信船が応信するまで繰り返します。受信船の名前が分かっている場合は、省略することも可能です。

2. 応信
送信開始を確認した受信船は、送信船に応信形象を送ります。

3. 送信
受信船からの応信を確認した後、送信船は再び起信形象を送り、通信文を送信します。必要に応じて発動形象を用いることもあります。通信文の最後には終信形象を送ります。

4. 解信
通信文が解読できた場合、受信船は解信形象を送信します。もし解読できなかった場合は、消信形象と「サラ」を送り、再送を要求します。

通信の特殊なケース

- 筆記が必要な場合: 送信船は「カケ」を数回送り、受信船が「ヨシ」を返した後、通信文を送信します。
- 送信の中断と再開: 「マテ」で送信を中断し、再開時には中断箇所の直前から送信を繰り返します。
- 信号文の取り消し: 消信形象を数回送り、直前の箇所から再送します。全て取り消す場合は、終信形象も送信します。
- 信号文の再送: 「サラ」を送り、再送を要求します。不明な箇所がある場合は、その直前から再送します。
- 信号文の確認: 「ムニ」を付けて送信し、受信船は受信した文を返送して確認を行います。
- アルファベット・数字の送信: アルファベットはカナ文字に変換し、数字は数字形象や略語を用いて送信します。

海洋少年団における手旗信号

海洋少年団では、手旗信号を重要な訓練項目としています。受信競技や送受信競技などを通じて、子供たちが手旗信号の技術を競い合っています。競技では、決められた手順に従って、正確かつ迅速な通信が求められます。

受信競技

送信者が送る信号を、競技参加者が一斉に受信します。ここでは、受信者が行う応答や解読などの行動は省略されます。

送受信競技

複数人でリレー形式で通信文を送信し、最終受信者の解読内容を評価します。この形式では、起信、応信、終信、解信などの信号が正しく使用される必要があります。

手旗信号の略語

日本船舶信号法には略語の規定はありませんが、各組織内で略語を定めて使用することがあります。例として、「カ：筆記せよ」「ミ：右に位置を移せ」「ト：止まれ」などがあります。

欧文手旗信号

19世紀にイギリス海軍で開発された欧文手旗信号は、腕木[[通信]]を基に、手軽に通信できるように改良されたものです。国際信号書では、セマフォア信号ではなく、モールス符号を旗や手で送信する方法が採用されています。

セマフォア信号

セマフォアは腕木信号を指し、古代ギリシャ語に由来します。諸外国の海軍でも使用されていましたが、国際信号書ではモールス符号を用いる方法が主流となっています。

モールス符号の利用

手旗や徒手でモールス符号を送信する際には、特定のルールに従います。例えば、呼び出しには「K2」や「AA AA AA」、応答には「T」、終了には「AR」の符号を使います。

まとめ

手旗信号は、簡便で視覚的な通信手段として、海軍発祥ながらも様々な組織で利用されています。その歴史的な背景や通信方法を理解することで、手旗信号の奥深さを知ることができます。現代においては、無線通信にその役割を譲る部分もありますが、手旗信号は依然として重要な訓練項目の一つとして、その技術が継承されています。

外部リンク

手旗信号を学ぼう - ウェイバックマシン（2001年2月5日アーカイブ分） - 福岡海洋少年団

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