フィルモア・イースト・ライヴ

オールマン・ブラザーズ・バンド『フィルモア・イースト・ライヴ』

『フィルモア・イースト・ライヴ』（At Fillmore East）は、アメリカを代表するロックバンド、オールマン・ブラザーズ・バンドが1971年に発表したライブ・アルバムです。このアルバムは、彼らの音楽キャリアにおける重要な転換点となり、今日に至るまでロック史に残る名盤として評価され続けています。

背景

オールマン・ブラザーズ・バンドは、1971年3月12日と13日の2日間、ニューヨークのフィルモア・イーストで1日に2回ずつ、計4回の公演を行いました。本作『フィルモア・イースト・ライヴ』は、これらの公演から最高のライブ音源を厳選して収録したものです。収録曲は全7曲で、そのうち4曲はそれ以前に発表されたスタジオ・アルバムには収録されていませんでした。特に「アトランタの暑い日」は、メンバー全員が作曲者としてクレジットされた、彼らの即興演奏の才能が光るジャム・セッションとして知られています。

プロデュースは、前作『アイドルワイルド・サウス』（1970年）に引き続き、名プロデューサーのトム・ダウドが担当しました。また、『アイドルワイルド・サウス』にもゲスト参加したトム・ドゥーセットが、一部の楽曲でハーモニカを演奏しています。3月13日の2回目の公演では、エルヴィン・ビショップ（ギター、ボーカル）、スティーヴ・ミラー（ピアノ）、ボビー・コールドウェル（パーカッション）がゲスト参加し、「ドランケン・ハーテッド・ボーイ」を演奏しましたが、この時の演奏はオリジナル・バージョンには収録されず、後述する『ヒストリカル・パフォーマンス ザ・フィルモア・コンサート』や本作のデラックス・エディション盤で初めて日の目を見ることになりました。

反響と評価

『フィルモア・イースト・ライヴ』は、アメリカのBillboard 200で13位に達し、1971年10月にはRIAAによってゴールドディスクに、1992年8月にはプラチナ・ディスクに認定されました。音楽的な評価も非常に高く、『ローリング・ストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では49位、「オールタイム・グレイテスト・ライヴ・アルバム50」では2位にランクインしています。さらに、2012年にアメリカのデジタル音楽誌『ペースト』が選出した「The 70 Best Albums of the 1970s」でも49位に選ばれるなど、時代を超えて愛される名盤としての地位を確立しています。

バリエーション

オリジナル・マスター・テープは一時行方不明になっていましたが、後にジョージア州メイコンの床屋で発見されました。これを受けて、オリジナル・バージョンのプロデューサーであるトム・ダウドがライブ音源を再編し、1992年10月に『The Fillmore Concerts』としてリリースされました（日本盤CDは『ヒストリカル・パフォーマンス ザ・フィルモア・コンサート』というタイトルで1993年2月1日に発売）。このバージョンには、3月12日録音の「トラブル・ノー・モア」、3月13日録音の「ドント・キープ・ミー・ワンダリン」「マウンテン・ジャム」「ドランケン・ハーテッド・ボーイ」、そして6月27日にフィルモア・イーストのクロージング・コンサートで演奏された「ワン・ウェイ・アウト」が追加収録されています。また、「エリザベス・リードの追憶」と「ユー・ドント・ラヴ・ミー」は、複数の公演のテイクを編集したバージョンが使用されています。

2003年には、本作のデラックス・エディション盤がリリースされました。このバージョンには、1974年発売のコンピレーション・アルバム『Duane Allman Anthology, Vol. 2』に収録されていた「ミッドナイト・ライダー」のライブ音源を含む全13曲が収録されており、曲順も『ヒストリカル・パフォーマンス ザ・フィルモア・コンサート』とは異なっています。

収録曲

アルバムには、「ステイツボロ・ブルース」、「誰かが悪かったのさ」、「ストーミー・マンデイ」、「ユー・ドント・ラヴ・ミー」、「アトランタの暑い日」、「エリザベス・リードの追憶」、「ウィッピング・ポスト」といった、オールマン・ブラザーズ・バンドの代表曲が収録されています。これらの楽曲は、彼らの卓越した演奏技術と即興演奏の才能を余すところなく伝えており、聴く者を熱狂的なライブ会場へと誘います。

まとめ

『フィルモア・イースト・ライヴ』は、オールマン・ブラザーズ・バンドの最高傑作であると同時に、ロック史における最高のライブ・アルバムの一つとして、永遠に語り継がれるでしょう。彼らの熱い演奏と、観客の熱狂が一体となったこのアルバムは、すべてのロックファンにとって必聴の作品です。

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