フィル・ヒューズ

フィリップ・ジョゼフ・ヒューズ3世：早熟の才能が開花、そして苦難の道のり

フィリップ・ジョゼフ・ヒューズ3世（Philip Joseph "Phil" Hughes III, 1986年6月24日 - ）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州オレンジ郡ミッションビエホ出身の元プロ野球選手。右投右打の投手として、メジャーリーグで活躍しました。

早熟の才能

幼少の頃から「Little Old Man」と呼ばれていたヒューズは、物静かで観察眼に優れた少年でした。5歳になる頃には野球に夢中になり、教会やスーパーでもピッチングとバッティングの練習を繰り返していたといいます。ボストン・レッドソックスのファンだった彼は、フットヒル高校時代にアルバイトをしながら、アメリカンリーグ優勝決定戦の結果を母親に確認するほどの熱中ぶりでした。

ヤンキース入団と衝撃のデビュー

2004年のMLBドラフトで、ニューヨーク・ヤンキースから1巡目（全体23位）で指名され、プロ入り。「人生を変えるような金額」のオファーがなければ大学進学を考えていたヒューズでしたが、ヤンキースの提示した140万ドルの契約金に心を動かされました。

2007年4月26日にメジャーデビューを果たすと、その才能はすぐに開花。5月1日の2回目の登板では6回1/3を無安打に抑える圧巻の投球を披露しました。しかし、その試合で肉離れを起こし、一時戦線離脱。復帰後も怪我の影響からか、デビュー当初の勢いは見られませんでした。

リリーフ転向とオールスター選出

2009年、ヒューズはリリーフに転向すると、その才能を再び開花させます。マリアノ・リベラの前のセットアッパーとして安定した投球を披露し、防御率1.40、51.1イニングで65奪三振という好成績を記録しました。2010年には先発ローテーション入りを果たし、シーズン前半の好投が評価され、オールスターゲームに選出されました。

苦難の時期とツインズへの移籍

2011年以降は故障や不調に苦しみ、期待されたほどの活躍はできませんでした。2013年には4勝14敗、防御率5.19と大きく負け越し、オフにFAとなります。

2013年12月5日、ミネソタ・ツインズと3年契約を結び、新たなスタートを切りました。ツインズは、本拠地のターゲット・フィールドが広いことから、ヒューズの被本塁打が減少し、復活すると見込んでいました。

ツインズでの復活と引退

2014年、ヒューズは16勝10敗と先発投手としての役割を果たし、見事に復活を遂げました。209.1イニングを投げ、与四球わずか16という驚異的な制球力を見せ、K/BB|K_BB（奪三振と与四球の割合）は規定投球回到達者の中で歴代最高の記録を達成しました。

しかし、2015年以降は再び調子を落とし、2018年にはサンディエゴ・パドレスへ移籍。その後、どの球団にも所属することなく、2021年1月3日に現役引退を表明しました。

投球スタイル

ヒューズの持ち球は、最速97mphのストレート、ナックルカーブ、スライダー、チェンジアップ。特にストレートは伸びがあり、打者を圧倒する威力がありました。また、登板前には必ずマウンドの後ろでひざまずき、家族に関する祈りを捧げるルーティンを持っていました。

記憶に残る投手

フィリップ・ジョゼフ・ヒューズ3世は、早熟の才能を開花させ、ニューヨーク・ヤンキースで将来を嘱望された投手でした。オールスター選出やツインズでの復活など、輝かしい瞬間もありましたが、度重なる故障に苦しみ、その才能を完全に開花させることはできませんでした。しかし、彼の記憶に残る投球は、多くの野球ファンを魅了しました。

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