フィル・リズート

フィリップ・フランシス・リズート: 巨人と小さな巨人の共演

フィリップ・フランシス・リズート（1917年9月25日生まれ）は、1940年代から50年代にかけてアメリカのプロ野球界で名を馳せた内野手です。彼はニューヨーク市で生まれ、ヤンキースの一員として7度のワールドシリーズ制覇に貢献し、そのキャリアを通じて多くのファンの心に残る選手となりました。

経歴と現役時代

リズートは、ブルックリンの電車運転手の息子として育ちました。彼はリッチモンドヒル高校に在学中に野球だけでなくフットボールでも秀でた才能を示していました。1937年、ニューヨーク・ヤンキースと契約し、1941年にメジャーデビューを果たします。その際、身長が168cmと当時としては非常に小柄だったため、ブルックリン・ドジャースからは入団を断られたという逸話もあります。

彼のルーキーイヤーには、打率.307を記録し、遊撃手としてリーグ最多の109併殺を達成しました。1942年にはオールスターゲームに選出され、ワールドシリーズでは本塁打を含む8安打を記録し、活躍を見せます。しかし、1943年からの4年間は第二次世界大戦に従軍するため、現役から離れました。1947年に復帰した後、彼は1949年に169安打を記録し、MVP投票でテッド・ウィリアムズに次ぐ成績を収めました。さらに1950年には打率.324、200安打、125得点を記録し、アメリカンリーグの最優秀選手に選ばれました。

リズートはこの時期にリーグ最多の犠打を記録しつつ、ヤンキースのワールドシリーズ連覇に大きく関与していました。彼は1956年に現役を引退しましたが、遊撃手としての併殺記録は、当時の歴史的な数値として後に四つの記録とされています。

引退後の活動

現役引退後リズートは、1957年から1995年までの長きにわたりヤンキース戦の中継解説者を務め、その独特の表現力や名セリフでファンに愛されました。特に「Unbelievable!」「Holy Cow!」などのフレーズは広く知られています。解説活動中には、ロジャー・マリスの61号本塁打の試合やパインタール事件の実況も担当しました。彼が1995年に解説を引退した理由の一つには、故ミッキー・マントルの葬儀に出席できなかったことがありました。ファンや後進のアナウンサーたちからは「ヤンキースの声」と称えられ、その存在感は今なお色褪せることがありません。

1985年、ヤンキースはリズートの背番号『10』を永久欠番に指定しました。これは彼の功績を認めるものであり、その後からもファンによる殿堂入りの署名運動が呼びかけられました。1994年にはベテランズ委員会からアメリカ野球殿堂に選出されるなど、その功績は報われたのです。

最期と遺産

リズートは2007年8月13日に肺炎のために89歳で他界しました。彼の死は、ヤンキースファンにとって大きな喪失であり、翌日行われた試合では彼を追悼する式典が行われ、選手たちは喪章を付けてプレイしました。

小柄ながらも大きな存在感を持つ選手として、リズートは今なお多くの人々の記憶に生き続けています。

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