フィンガーボウル

フィンガーボウル：洗練された食卓の習慣

フィンガーボウルとは、食事の席で指先を洗うために用いられる、小ぶりの器です。一般的にはガラス、陶器、または金属でできており、直径11cm、高さ4.5cmほどの大きさです。使用時には、中に水、そして消臭や香り付けのためにレモンの輪切りやコリアンダー、中国料理の場合はウーロン茶やプーアール茶などを入れることもあります。

使用方法：洗練された手元の演出

レストランなどでは、エビやカニなどの、手で食べる料理が提供される際にフィンガーボウルが用意されます。料理を食べた後、片方の手の指を第二関節までボウルの中の液体に浸し、静かに汚れを落とします。その後、ナプキンで手を丁寧に拭き取ります。ただし、フォークやナイフで食べられる料理であれば、必ずしもフィンガーボウルが必要なわけではありません。

フィンガーボウルの見た目は、飲み物が入った器とよく似ているため、誤って中の水を飲んでしまう人がいるようです。これは、フィンガーボウルの使い方を知らないことが原因です。決して飲むものではないことを覚えておきましょう。

歴史：古代ローマから続く伝統

フィンガーボウルの歴史は古く、古代ローマ時代まで遡ります。17～18世紀、フォークやスプーンが一般的に使用されるようになるまでは、ヨーロッパでは手で直接食事をするのが一般的でした。そのため、フィンガーボウルは、食事全般で使用されていました。特に、水に香りをつける習慣は、中世ヨーロッパの上流階級の間で流行し、その名残として、現在でも、手で食べる必要のない料理が出された場合にもフィンガーボウルが用意されることがあります。

エピソード：フィンガーボウルの誤用と配慮

フィンガーボウルに関する興味深いエピソードがいくつか伝えられています。例えば、荒木貞夫陸軍大将が主催した帝国ホテルでの宴会で、客がフィンガーボウルの水を誤って飲んでしまった際に、荒木大将も自ら水を飲んで客に恥をかかせまいとしたという逸話です。このエピソードは、絵本にもなっています。

また、エドワード8世（イギリス国王）が王太子時代に開いた晩餐会でも同様のエピソードが伝えられています。ヴィクトリア女王が主催者だったとする話もあり、日本では女王説が広く知られています。さらに、李鴻章が水を飲んでしまい、オットー・フォン・ビスマルクが主催者だったとする話も伝えられています。夏目漱石の『吾輩は猫である』にも、英国の兵営での同様のエピソードが登場します。小学校の道徳の教科書にも、女王の行動として取り上げられている例もあります。

まとめ：テーブルマナーとしての役割

フィンガーボウルは、単なる食器ではなく、洗練された食卓の習慣の一部であり、歴史と文化を背景にした、奥深い意味を持つアイテムです。その歴史やエピソードを知ることで、食事の際にフィンガーボウルに出会った時の理解が深まり、より一層洗練された食卓を演出できるでしょう。

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