フイン・タン・ファット

フイン・タン・ファット（Huỳnh Tấn Phát、1913年2月15日 - 1989年9月30日）は、ベトナムの政治、建築、革命運動において傑出した人物です。彼は、ベトナム国家評議会副議長、副首相兼建設大臣、そして南ベトナム共和国の首相という要職を歴任し、ベトナムの歴史に深く刻まれる功績を残しました。

生い立ちと建築家としての才能

フイン・タン・ファットは、1913年にフランス領インドシナのミトー市で生まれました。ハノイ大学で建築を学び、1940年にはベトナム人として初めてサイゴンに自身の建築事務所を開設しました。1941年には、フランス領インドシナ総督が主催したインドシナ展示コンベンションセンターの設計コンペで最優秀賞を受賞し、その才能を広く知らしめました。ホーチミン市1区には、彼の設計による数多くの象徴的な建物が今も残っています。

革命運動への参加

建築家としての成功を収める一方で、フイン・タン・ファットは政治活動にも積極的に関与しました。反フランス雑誌『ジュネス（青年）』の編集者となり、ヴァンガード青年運動の共同創設者として活動しました。1945年3月にはインドシナ共産党に入党し、サイゴンで革命運動を開始しました。その後、ベトナム南部の情報報道委員会の副委員長に任命され、ベトナム民主共和国の第一回国民議会議員にも選出されました。第二次世界大戦後、フランスがサイゴンを再占領した際には逮捕され、2年間の服役を余儀なくされました。

南ベトナム共和国首相として

釈放後、フイン・タン・ファットは革命活動を再開し、1949年にはベトナム南部の行政抵抗委員会の委員に任命され、サイゴン・チョロン自由な声放送局の運営を直接担当しました。彼はベトコンの主要な理論家としても頭角を現し、1969年に南ベトナム共和国が成立すると、初代首相に就任しました。1975年4月30日にベトナム共和国政府が降伏した後も、南ベトナム共和国は名目上の政府として存続し、彼は1976年7月2日の北ベトナムとの統一までその職を務めました。

統一後の活動と晩年

南ベトナム共和国が北ベトナムと統一された後、フイン・タン・ファットは1976年から1982年までベトナムの副首相を務めました。1983年から1988年にかけては、ベトナム共産党、ベトナム民主党、ベトナム社会党を含むベトナム祖国戦線の議長も務めました。彼の共産主義への献身は高く評価され、ホー・チ・ミン勲章を授与されました。

フイン・タン・ファットは1989年にホーチミン市で76歳で生涯を閉じましたが、その功績は今もなおベトナムの人々に語り継がれています。彼の名前は、ベトナムの多くの都市や省の通りに付けられています。彼の人生は、建築家としての才能と革命家としての情熱が結びついた、類まれなものであったと言えるでしょう。

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