フェアチャイルド J83

フェアチャイルド J83 (Fairchild J83)

フェアチャイルド J83は、1955年にアメリカ合衆国で開発が始まったターボジェットエンジンです。このエンジンは、主に巡航ミサイルや非武装のデコイ機に使用されることを目的としており、その開発は1958年11月に終息しました。

設計と開発の背景

1960年代の冷戦時代において、防空の脅威への対策として、アメリカ空軍は新しい防空戦略を模索していました。1953年3月、アメリカ空軍は「全体運用要求 (GOR) 16」を策定し、航空機や地上発射型デコイミサイルを使用して敵の防空施設を攪乱し、戦略爆撃機の効果を高めることを目指しました。この結果、1955年12月にフェアチャイルド社は地上発射式のデコイ兵器システム「123A」の契約を獲得しました。

その後、同じくデコイ開発に参画したマクドネル・エアクラフトは、航空機から発射されるデコイ「ADM-20 Quail」を製造することとなりました。特に、両方のデコイの開発リスクを低減するために、1954年11月には二種類のエンジンに関する契約も結ばれました。それぞれのエンジンは、約2,450ポンドの推力を発揮し、推力重量比は10:1を目指しました。ゼネラル・エレクトリック社が開発したJ85エンジンは、この目標に向けてより先進的な設計が施され、高い推力重量比を誇りました。

J83の開発と試験

J83エンジンは1957年初頭に初めて運転され、改造されたB-57キャンベラがその飛行試験機として利用されました。J83を搭載したXSM-73 Gooseは、15回に及ぶ飛行試験が実施されるなど、開発は順調に進みました。

しかし、カナディア社のTutor向けには他のエンジン製造会社との競争があり、最終的にはライセンス生産されたJ85エンジンが選ばれました。また、ノースロップのXQ-4Aは、本来J83エンジンを搭載して開発が進められていましたが、プロジェクトの中止によりこのエンジンの実用化はされませんでした。

中止とその後

1958年11月にJ83エンジンの開発は終了しましたが、その時点でアメリカ空軍はJ85エンジンが性能目標を十分に満たしていることを認識していました。このJ85は、ADM-20 Quailデコイ、XSM-73ミサイル、さらにT-38タロン練習機にも活用されました。一方で、J83はXSM-73の動力としてのみ利用され、その後は新たな用途を見出すことができませんでした。結果として、フェアチャイルド社のロングアイランドにあるエンジン部門は、1959年の夏に閉鎖されることとなりました。

仕様

• - 形式: ターボジェット
• - 推力: 2,450 lb. (10.9 kN)
• - 乾燥重量: 363 lb (165 kg)
• - 圧縮機: 7段式遷音速軸流式圧縮機
• - 燃焼器: アニュラ型
• - タービン: 2段式タービン
• - 使用燃料: JP-4
• - 燃料消費率: 0.94 SFC
• - 推力重量比: 6.5:1

搭載機

• - XSM-73 Goose
• - ノースロップ XQ-4A (未製造)

関連項目

• - フェアチャイルド J44
• - ゼネラル・エレクトリック J85
• - 航空用エンジンの一覧

本エンジンの技術的な成果は、アメリカの航空技術の発展と冷戦時代の航空戦略において重要な役割を果たしたといえるでしょう。

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