フェイス・ダンシズ

ザ・フー『フェイス・ダンシズ』

『フェイス・ダンシズ』（Face Dances）は、ザ・フーが1981年に発表したアルバムです。1978年に急逝したドラマー、キース・ムーンの後任としてケニー・ジョーンズが加入後、初のオリジナルアルバムとなりました。全英2位、全米4位を記録し、バンドの新たな方向性を示す作品として注目されました。

制作の背景

新生ザ・フーは1979年にライブ活動を再開し、ヨーロッパやアメリカでツアーを行いました。しかし、ツアー中にシンシナティで観客が将棋倒しになり11人が死亡するという悲劇に見舞われ、バンドに暗い影を落としました。

ピート・タウンゼントは新生ザ・フーでの演奏を楽しんでいたものの、ムーンの死後、ソロ活動への関心を強めていました。1980年にはソロアルバム『エンプティ・グラス』をリリースし、全米5位の大ヒットを記録しますが、これがジョーンズに「ザ・フーよりもソロの方にいい曲を提供している」という不満を抱かせます。また、ロジャー・ダルトリーもジョーンズのドラムプレイに不満を持っており、自身の主演映画の撮影を優先するなど、バンド内には不協和音が漂い始めていました。

そのような状況の中、『フェイス・ダンシズ』の制作は1980年6月に始まりました。プロデューサーにはイーグルスを手掛けたビル・シムジクが迎えられ、前作同様に打ち込みを多用したポップで音数の多いサウンドが特徴となっています。

リリースと評価

『フェイス・ダンシズ』は1981年3月にリリースされました。イギリスでは2位を獲得しましたが、アメリカでは4位となりプラチナアルバムを獲得しました。先行シングル「ユー・ベター・ユー・ベット」は、イギリスで9位、アメリカのメインストリーム・ロック・チャートで1位を獲得しています。

アートワーク

アルバムジャケットは、16人の画家が描いたメンバー4人の肖像画が並べられた印象的なデザインとなっています。デザインはビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』でも有名なピーター・ブレイクが手掛けました。裏ジャケットは画材箱をイメージしたデザインで、クライヴ・パーカーが担当しました。

リイシュー

1997年にはリマスター／リミックスCDがリリースされ、未発表曲やライブバージョンが追加収録されました。2011年には日本限定でオリジナルマスターを基にしたDSDリマスターCDがリリースされています。

収録曲

You Better You Bet
Don't Let Go the Coat
Cache Cache
The Quiet One
Did You Steal My Money
How Can You Do It Alone
Daily Records
You
Another Tricky Day

パーソネル

ロジャー・ダルトリー - リードボーカル
ジョン・エントウィッスル - ベース、バッキングボーカル
ケニー・ジョーンズ - ドラムス
* ピート・タウンゼント - ギター、キーボード、ボーカル

『フェイス・ダンシズ』は、ザ・フーの新たな時代を告げる作品として、その後のバンドの活動に大きな影響を与えました。

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