フェズ王国

フェズ王国（مملكة فاس）は、1472年から1554年までフェズを首都として現在のモロッコ地域を支配した王国であり、フェス王国、ファス王国とも呼ばれます。ワッタース朝によって統治されました。

建国と発展

1472年、アブー＝アブドゥッラー・アル＝シャイフ・ムハンマド・イブン・ヤフヤー（en）がフェズを征服し、王国を建国しました。この建国は、イベリア半島におけるイスラム勢力の衰退と深く関わっています。

スペインからの避難民

1492年、グラナダ王国が滅亡し、スペイン王国によるレコンキスタが完了すると、多くのイスラム教徒やユダヤ人がスペインを離れざるを得なくなりました。レオ・アフリカヌスを含むイスラム教徒や約5000人のスペインのユダヤ人がフェズ王国に避難し、1493年にはグラナダ王国最後の君主ムハンマド11世も母アイシャ（en）と共にフェズに到着しました。しかし、アイシャは到着後まもなく死去しました。これらの避難民の流入は、フェズ王国の文化や社会に大きな影響を与えました。

ポルトガルとの抗争

フェズ王国は、ポルトガル王国との間で領土を巡る争いを繰り広げました。1488年にサフィ、1502年にアル・ジャディーダ、1505年にアガディール、1506年にSouira Guedimaといった沿岸部の都市を次々とポルトガルに奪われました。これらの都市は、大西洋交易の拠点としてポルトガルにとって重要な存在でした。

自然災害と内紛

1522年には、フェズで大地震が発生し、王国に多大な被害をもたらしました。また、サアド朝が勢力を拡大し、1511年にラバト、1524年にマラケシュを奪われるなど、内紛も頻発しました。これらの要因が重なり、フェズ王国の国力は徐々に衰退していきました。

滅亡

1548年、最後の国王がサアド朝に捕らえられ、1550年には首都フェズが征服され、フェズ王国は滅亡しました。短い期間ではありましたが、フェズ王国は、北アフリカにおけるイスラム文化の一つの中心地として、重要な役割を果たしました。その歴史は、激動の時代における文化交流や勢力争いの縮図と言えるでしょう。

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