フェデリコ・チェージ

フェデリコ・チェージ：アッカデーミア・デイ・リンチェイの設立者

フェデリコ・チェージ（1585年-1630年）は、イタリアの貴族であり、博物学者として名高い人物です。彼の最も重要な功績は、アッカデーミア・デイ・リンチェイ（リンチェイ学士院）という、歴史上重要な科学アカデミーを設立したことでしょう。

チェージは、5人の枢機卿を輩出した名家の子として生まれました。幼少期から自然科学への強い関心を持ち、書物からの学習だけでなく、直接の観察を通して自然を理解しようとする信念を持っていました。彼の科学への情熱は、父親の反対にもかかわらず、母親の支援を受けて育まれていきました。

1603年、わずか18歳の時、チェージはオランダ出身の医師ヨハネス・ファン・ヘーク（イタリア名：ジョヴァンニ・エッキオ）や、他のイタリア人学者たちと共にアッカデーミア・デイ・リンチェイを設立します。このアカデミーは、観察、実験、帰納法を重視した自然科学研究を目的としていました。その名称は、ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタの著作『自然魔術』に記述されたオオヤマネコの鋭い視力に由来しており、科学者にとって理想的な洞察力を象徴しています。また、モットーとして「minima cura si maxima vis」（「細微な観察と大きな夢」）を掲げました。

当時の自然科学研究は、宗教裁判などの影響で容易ではありませんでした。実際、デッラ・ポルタが設立した類似の会は、魔術の嫌疑をかけられて教皇によって禁止されています。チェージの父親は、アカデミーの会員をローマから遠ざけようとしましたが、チェージはデッラ・ポルタと交流し、アカデミー存続のため尽力しました。ナポリに支部を設立し、後にデッラ・ポルタ自身も会員に迎え入れています。

チェージは自身の高い地位、豊富な資金、そして優れた交渉力を使って、アカデミーの地位向上に努めました。その結果、1611年にはガリレオ・ガリレイを会員に迎え入れることに成功します。アッカデーミア・デイ・リンチェイは、ガリレオの『太陽黒点論』や『偽金鑑識官』といった重要な著作の出版にも携わり、全盛期には32人の会員を擁するまでに成長しました。

チェージ自身の学問的貢献としては、植物に関する百科事典『Tabulae Phytosophicae』の編纂（未完）や、ガリレオ製作の顕微鏡を用いた植物形態観察などが挙げられます。

しかし、1630年にチェージが亡くなると、アカデミーは徐々に衰退していきました。後継者たちは新たなパトロン獲得に努めましたが、アッカデーミア・デイ・リンチェイの活動は最終的に消滅してしまいます。チェージの死は、イタリアにおける科学研究の発展に大きな影を落とす出来事であったと言えるでしょう。彼の功績は、近代科学の黎明期における重要な一歩として、現在も高く評価されています。

もう一度検索