フェデリコ・バーモンテス

フェデリコ・マルティン・バーモンテス：伝説の山岳王「トレドの鷹」

フェデリコ・マルティン・バーモンテス（Federico Martín Bahamontes、1928年7月9日 - 2023年8月8日）は、スペイン、カスティーリャ＝ラ・マンチャ州トレド県出身の元自転車競技選手です。「トレドの鷹」の異名を持ち、ロードレース史上屈指のクライマーとして、その名を刻んでいます。

グランツール山岳王最多記録保持者

バーモンテスは、グランツール（ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ）で合計9回の山岳王を獲得しました。これはグランツール史上最多記録です。

ツール・ド・フランス：6回（1954, 1958, 1959, 1962, 1963, 1964）
ジロ・デ・イタリア：1回（1956）
ブエルタ・ア・エスパーニャ：2回 （1957, 1958）

特にツール・ド・フランスでの6回の山岳王獲得は、1983年にルシアン・バンインプが並ぶまで、そして2004年にリシャール・ヴィランクが7回目の受賞を果たすまで、長らく最多記録でした。

1959年ツール・ド・フランス：総合優勝

バーモンテスは山岳王への強いこだわりを持っていましたが、1959年のツール・ド・フランスでは総合優勝も果たします。ピレネー山脈越えの第14ステージ終了時点で、バーモンテスは総合首位のヨー・ホーヘンナールに7分4秒差の6位につけていました。

しかし、翌日の第15ステージ、ピュイ・ド・ドームでの個人タイムトライアルで、バーモンテスは首位を獲得しただけでなく、ホーヘンナールとの差を一気に4秒差まで縮めるという驚異的な走りを見せます。

アルプス山脈が舞台となった第17ステージでは、区間優勝したシャルリー・ゴールと同タイムの2位に入り、ついにマイヨ・ジョーヌ（総合首位の証）を獲得しました。ガリビエ峠など標高2000m級の山々が連なる難所の第18ステージでも、ジャック・アンクティル、ゴールらを抑え込み、マイヨ・ジョーヌを死守しました。この時点で、アンクティルは9分以上、ゴールは21分以上の差をつけられ、総合優勝争いから脱落します。その後、アンクティルは追い上げを見せるものの、最終的に3位に終わりました。この大会で、バーモンテスは単なるクライマーではない、総合力も兼ね備えた選手であることを証明しました。

1963年のツール・ド・フランスでは、アンクティルに総合3連覇を許したものの、3分35秒差の総合2位に入りました。この年のツールでは、ピレネー越え最終日となる第16ステージで完璧な走りを見せ、一時アンクティルの連覇が危ぶまれるほどでした。しかし、アンクティルは第19ステージの個人タイムトライアルでバーモンテスを振り切り、そのまま総合3連覇を達成しました。なお、バーモンテス以外の選手は、アンクティルに10分以上の差をつけられています。

主要ステージレースにおける総合優勝は、この1959年のツール・ド・フランスのみであり、他のワンデーレースでの優勝記録もありません。バーモンテスは、優勝よりも山岳王の称号に誇りを感じていたと言えるでしょう。



参考
フェデリコ・バーモンテス - サイクリングアーカイヴス（英語）

もう一度検索