フェデリコ・リッチ

フェデリコ・リッチ（Federico Ricci）は、1809年10月22日にイタリア南部に位置するナポリで生を受けた作曲家です。彼は音楽家の家系に生まれ、兄のルイージ・リッチもまた、同時代に活躍した著名な作曲家として知られています。兄弟共に作曲の道に進んだことは、当時のイタリアにおける音楽環境の一端を示すものと言えるでしょう。

若い頃、フェデリコは故郷ナポリにある名高い音楽学校で本格的な音楽教育を受けました。この学校での学びは、彼の後の創作活動の基盤となりました。記録によれば、彼はまだ学生であった1823年には、既に最初のオペラを手掛けています。これは、彼が早くから作曲家としての才能を発揮していたことを物語っています。

リッチの名声が確立されたのは、1838年に発表されたオペラ『La prigione di Edimburgo』（エディンバラの監獄）の大成功によってです。この作品は聴衆から熱狂的に迎え入れられ、評論家からも高く評価されました。この成功は、フェデリコ・リッチをイタリアオペラ界における注目の存在へと押し上げ、その後のキャリアに大きな弾みを与えました。

彼は生涯を通じてオペラを中心に数多くの作品を生み出しました。その創作期間は長く、1830年代半ばから晩年に至るまで精力的に活動を続けました。彼の作品リストは、彼の多作ぶりと、当時のイタリアオペラの多様な潮流への関わりを示しています。

以下に、確認されている彼の主要なオペラ作品の一部を年代順に挙げます。

Il colonello（大佐、1835年）
Monsieur de Chalumeaux（シャルモー氏、1835年）
I1 disertore per amore（愛のための脱走兵、1836年）
La prigione di Edimburgo（エディンバラの監獄、1838年）
Un duello sotto Richelieu（リシュリュー枢機卿のもとでの決闘、1839年）
Luigi Rolla e Michelangelo（ルイージ・ロラとミケランジェロ、1841年）
Corrado d'Altamura（コッラード・ダルトアムーラ、1841年、および改訂版など1844年）
Vallombra（ヴァロンブローザ、1842年）
Isabella de'Medici（イザベラ・デ・メディチ、1845年）
Estella di Murcia（ムルシアのエステラ、1846年）
L'amante di richiamo（人気の恋人、1846年）
Griselda（グリゼルダ、1847年）
I due ritratti（二つの肖像画、1850年）
Il paniere d 'amore（愛の籠、1853年）
Une folie à Rome（ローマでの狂気、1869年）
Le docteur Rose, ou La dogaresse（ローズ博士、または総督夫人、1872年）
* Don Quichotte（ドン・キホーテ、1876年）

これらの作品に見られるように、彼はイタリア国外の題材や文学作品からもインスピレーションを得ていました。特に『La prigione di Edimburgo』の成功は、彼のキャリアにおいて最も重要な出来事の一つとして記憶されています。

フェデリコ・リッチは、1877年12月20日にイタリア北東部の都市コネリアーノで68歳で亡くなりました。彼は、その生涯をオペラ作曲に捧げ、当時のイタリア音楽史において一定の足跡を残した作曲家として評価されています。兄ルイージと共に、リッチ兄弟は19世紀イタリアオペラの発展に寄与した存在と言えるでしょう。

もう一度検索