フェラーリ・125S

フェラーリ伝説の幕開け：125Sの軌跡

1947年、イタリアの自動車メーカー、フェラーリ社は、その歴史における最初のロードカー、125Sを世に送り出しました。このモデルは、単なる自動車ではなく、フェラーリというブランドのアイデンティティ、そして後の栄光の歴史を築き上げる礎となった象徴的な存在です。

アルファロメオからの独立とV12エンジンの誕生

125Sの誕生には、アルファロメオのレースチームから独立したエンツォ・フェラーリの決意と、才能あるエンジニアたちの情熱が深く関わっています。第二次世界大戦終結後、アルファロメオ時代の同僚であったジョアッキーノ・コロンボが、革新的なV型12気筒エンジンの開発を提案。この提案はエンツォの心を掴み、1945年には125Sの製造計画が本格的にスタートしました。

コロンボの設計図を基に、ジュセッペ・ブッソとルイジ・バッツィが開発に携わり、1946年9月には心臓部となるエンジンが完成。同年12月には、125Sに加え、ロードカーの125GT、そしてF1参戦用の125F1の製造も発表されましたが、GTモデルの市販化計画は実現しませんでした。

1947年3月12日、ボディ非架装の125Sが完成。エンツォ自身もマラネッロ近郊で試運転を行い、その走りを確認しました。

レース活動と栄光の初勝利

125Sは、フェラーリのレース活動の幕開けを告げる重要な役割を担いました。1947年5月11日、ピアチェンツァ・サーキットで行われたレースに初出場。フランコ・コルテーゼのドライブでトップを走行するも、燃料ポンプの故障によりリタイアという悔しい結果に終わりました。しかし、エンツォはこの結果を「幸先の良い失敗」と捉え、今後の改善に繋げました。

その後、5月25日に行われたローマGPにおいて、コルテーゼが125Sを駆り見事優勝。フェラーリにとって初の栄光となる勝利を掴み取りました。この年は市街地レース12戦に出場し、うち6勝という輝かしい成績を残しました。

125Sから166へ、そして現代への継承

1947年後半、レース活動を終えた2台の125Sは、資金調達のため、最初の顧客であるロシアの貴族に売却されました。その後、アメリカの自動車販売会社を経て、2000年代初頭にはオリジナル部品を用いて125Sとして復元されました。現在は、アメリカのピーターセン自動車博物館に収蔵され、その姿を見ることができます。一方、フェラーリ博物館に展示されている125Sは、当時の図面に基づいてフェラーリ社が制作したレプリカです。

125S：技術的特徴

125Sのシャーシは鋼管ラダーフレーム構造で、ボディは2座席オープン型の「バルケッタ」スタイル。フェンダーのない葉巻型のボディに交換した「125C」はシングルシーターレースにも参戦しました。

心臓部であるティーポ125エンジンは、1.5L排気量ながら60度V型12気筒レイアウトを採用。ショートストロークタイプの設計で、最高出力は100馬力を発揮しました。このエンジンは、フェラーリがその後も長く続けるV型12気筒路線の原点と言えるでしょう。F1バージョンでは過給機を搭載していました。

結語

フェラーリ125Sは、単なる一台のスポーツカーではありません。それは、フェラーリのスピリット、そしてその後の成功の礎を築いた、伝説の始まりを示す象徴的な存在です。その歴史的価値、そして技術的革新は、現代においても人々を魅了し続けています。

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