フェラーリ・365GT4BB

フェラーリ365GT4BB：ミッドシップへの挑戦と課題

フェラーリ365GT4BB（365GT4/BB）は、1973年から1976年にかけて製造された、フェラーリの歴史において重要な転換期を象徴するスーパーカーです。365GTB/4（デイトナ）の後継として開発され、それまでのフロントエンジンレイアウトからミッドシップレイアウトへの移行を模索したモデルと言えるでしょう。

開発の背景と目標

開発は1969年3月に開始。チーフエンジニアであるアンジェロ・ベレイと、パワートレーン設計担当のジュリアーノ・ディ・アンジェリスの下、軽量化、空力性能の向上、そして将来的なミッドシップ量産技術の蓄積を目指しました。車名に含まれるBBは、Berlinetta Boxer（ベルリネッタ・ボクサー）の略で、「2ドアクーペ」と「水平対向エンジン」を意味するものの、実際には180度のV型エンジンを搭載しています。

当初は25台限定の生産計画でしたが、需要の高さから50台、さらに150台、そして追加生産分を含め、最終的には387台が生産されることになります。1970年代前半のスーパーカーブームを反映した成功と言えるでしょう。

運動性能とハンドリング

軽量化により、軽快な運動性能を実現したものの、ハンドリングは必ずしも優れていませんでした。リアオーバーハングの重量が大きく、エンジンの搭載位置により重心が高かったためです。最高速度は公称302km/hと謳われましたが、実測値は280km/h程度だったとされており、最高出力も公称値385PSに対し、実際は290～300PS程度と推測されています。この公称値は、ライバルであったランボルギーニ・カウンタックのスペックに対抗する意図があったと考えられます。

革新的なエンジンレイアウトと課題

365GT4BBは、デイトナのV12エンジンをバンク角180度に広げ、トランスミッションの上に重ねるという、イシゴニスレイアウトを採用しました。このレイアウトは、後のテスタロッサシリーズにも受け継がれましたが、クランクセンターの高さが地上588mmと非常に高いため、重心高に影響を与え、ハンドリングに課題を残すこととなりました。また、このモデルからカムシャフトの駆動にタイミングベルトが採用されましたが、大排気量高出力エンジンでは、耐久性やメンテナンスの面で課題が顕在化しました。

ボディ設計と軽量化

ボディ設計においては、当時としては先進的なコンピュータ計算を導入。フェラーリとして初めてオールスチールボディを前提に設計されました。また、シャーシは従来の複雑なラダー構造から、必要最小限に単純化され、軽量化に貢献しています。さらに、インテリア材、エアクリーナーケース、トランクルームにはFRP、カウルにはアルミニウム合金を採用するなど、徹底的な軽量化が図られました。その結果、DIN規格で1236kg、実測値で1247kgという軽量な車重を実現しました。

生産終了と日本での人気

1976年7月、排ガス規制に対応した512BBへのマイナーチェンジを機に生産を終了しました。日本におけるスーパーカーブーム時にはすでに生産終了していましたが、並行輸入を通じて多くが日本に輸入され、販売店やスーパーカーショーで目にする機会も多く、当時の人々には512BBと共に「フェラーリBB」として広く認知されていました。

まとめ

フェラーリ365GT4BBは、ミッドシップレイアウトへの移行期に生まれたモデルとして、革新的な試みと課題の両方を抱えていたと言えるでしょう。その独特のエンジンレイアウト、軽量化されたボディ、そして複雑なハンドリング特性は、多くの自動車愛好家の記憶に刻まれています。387台という限定生産数も、希少価値を高め、今日においても高い人気を誇っています。

もう一度検索