フェラーリ・612スカリエッティ

フェラーリ612スカリエッティ：エレガンスとパフォーマンスの融合

フェラーリ612スカリエッティは、イタリアの自動車メーカー、フェラーリが2004年から2011年にかけて製造した、456Mの後継モデルとなる2+2シーターのグランドツアラーです。約6Lの排気量を持つV型12気筒エンジンを搭載し、456Mを凌駕する出力と、拡大された室内空間が特徴です。モデル名は、エンジンの排気量と気筒数、そしてフェラーリと長年に渡り深い関係にあったカロッツェリア、スカリエッティ社へのオマージュを反映しています。

洗練されたデザインと快適な室内空間

ピニンファリーナのデザイナー、フランク・ステファンソンと奥山清行氏の手によるデザインは、先代モデル456Mよりもエレガントで洗練された印象です。特徴的なヘッドライトやサイドのボディラインは、1954年型の375MMへのオマージュとしてデザインされています。

巧みなパッケージングにより、後席を含め、4人の大人でも余裕を持って乗車できる広々とした室内空間を実現しています。456Mからサイズアップされたボディは、実用性と快適性を両立したグランドツアラーとしての高い完成度を示しています。

高性能V12エンジンと洗練されたトランスミッション

搭載されるエンジンは、5748ccのV型12気筒48バルブ、547馬力のティーポ133型です。456GTと比較してフロントタイヤの位置が前方に移動したことで、重量配分の最適化が図られています。

トランスミッションは、ギア操作とクラッチ操作を油圧で自動化する6速セミオートマチックトランスミッション「F1マチック」と、従来型の6速MTの2種類が用意されました。F1マチックは、MTと同じトランスミッション機構を使用しており、高い信頼性とスムーズな変速を実現しています。また、456GTから採用されているトランスアクスル機構により、重量バランスの最適化に貢献しています。

軽量化のため、360モデナで使用された押し出しアルミ材を使用したスペースフレームが採用され、車重は1840kgに抑えられています。その結果、最高速度は315km/h以上を達成しています。販売開始後にはF1マチックのセッティングが複数回に渡りアップデートされ、一部はレトロフィットも可能でした。

特別仕様車：多様なバリエーション

612スカリエッティは、いくつかの特別仕様車が発表されました。

GG50: ジョルジェット・ジウジアーロのデザイナー活動50周年を記念して制作されたモデル。ジウジアーロ氏のデザインによる、コンパクトで運転しやすいデザインが特徴です。
612スカリエッティK: ワンオフ生産されたモデル。元不動産王ピーター・S・カリコウ氏の依頼により、ピニンファリーナのジェイソン・カストリオタがデザインを担当しました。
セッサンタ: フェラーリ創立60周年記念モデル。限定60台が生産され、専用カラーとエレクトロクロミック・ガラスルーフが採用されました。
612スカリエッティ・エンハンスト: 統合マルチメディアシステム「インフォテレマティックシステム」を搭載したモデル。日本国内のみで販売されました。

広大な市場への挑戦：チャイナ・ツアーとインド・ツアー

2005年には、中国大陸横断の「チャイナ・ツアー」とインド国内を走る「インド・ツアー」が実施されました。これらは、フェラーリのブランドイメージ向上と、中国やインドといった成長市場への積極的なアプローチを示すものでした。

フェラーリ612スカリエッティは、優れた走行性能と快適な室内空間、そして美しいデザインを兼ね備えた、まさにグランドツアラーの傑作と言えるモデルです。その存在感は、今日でも多くのフェラーリファンを魅了し続けています。

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