フェリックス・ブーレ

アントワーヌ・フェリックス・ブーレ

アントワーヌ・フェリックス・ブーレ（Antoine Félix Bouré）は、1831年7月18日にベルギーの首都ブリュッセルで生を受けた彫刻家です。彼は特に、威厳に満ちたライオンの記念碑的な彫刻作品を数多く手掛けたことで知られています。

彼の家族には、彫刻家として将来を嘱望されながらも若くして病に倒れた8歳年上の兄、ポール・ブーレがいました。フェリックスは兄の足跡を追うように、1846年にブリュッセル王立美術アカデミーに入学し、彫刻家ルイ・ジェオットのもとで研鑽を積みました。1852年にアカデミーを卒業した後、彼は著名な彫刻家ギヨーム・ギーフの工房で実務経験を積みます。

キャリアの初期において、ブーレはイタリアでの経験が大きな影響を与えました。1853年には、フィレンツェに住む叔父を頼ってイタリアに滞在し、当地の美術館を巡りながら古代やルネサンス期の彫刻作品を精力的に研究しました。フィレンツェ滞在中には、現地の彫刻家アリストデモ・コストーリに師事し、その技術と芸術観を吸収しました。

ベルギー帰国後、ブーレの才能は次第に認められるようになります。1861年頃からは公共機関からの依頼が増加し、ブリュッセルの主要な建築物である市庁舎（Stadhuis）、裁判所（Justitiepaleis）、そして議事堂（Paleis der Natie）といった重要な建物の装飾彫刻を手掛けるなど、公共空間における活動が活発化しました。

彼はまた、ブリュッセルの芸術家が集まる文化団体「Les Vrais Amis de l'Union et du Progrès Réunis」の一員となり、同じく彫刻家のシャルル・オーギュスト・フレカンと親しい友人となりました。私設美術館を運営していた画家で美術の後援者ヴィルジニー・ボヴィエの展覧会に作品を何度か出品した後、1868年に設立された進歩的な芸術家団体「自由美術協会（Société Libre des Beaux-Arts）」の創立会員に名を連ねます。この協会において、彫刻家としては彼とシャルル・ヴァン・デル・スタッペンのわずか二人のみでした。ブーレは協会の展覧会に、1875年まで継続して作品を発表し続けました。

1870年代に入ると、当時ブリュッセルで活動していた若きオーギュスト・ロダンと親交を結びます。ロダンの代表作の一つである『青銅時代』を巡り、人体から直接型を取ったのではないかという非難が起こった際には、ブーレはロダンを擁護するための証言を行うなど、彼との友情は篤いものでした。

彼の最もよく知られた業績の一つは、力強いライオン像の制作です。1872年にはブリュッセルのアカデミー宮殿（Academiënpaleis）のために一対のライオン像を制作しています。また、リエージュ州にあるジレップ・ダムに設置された高さ1.5メートルを超える砂岩製のライオン像も彼の代表作として挙げられます。これらの作品に見られるように、彼はライオンの力強さと威厳を見事に表現することで、その名声を確立しました。

アントワーヌ・フェリックス・ブーレは、1883年4月8日、ブリュッセル近郊のイクセルにてその生涯を終えました。彼の作品は、ベルギー各地の公共空間に今も残されており、19世紀ベルギー彫刻史における重要な足跡を示しています。

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