フェルキッシャー・ベオバハター

フェルキッシャー・ベオバハターとは

『フェルキッシャー・ベオバハター』（Völkischer Beobachter）は、ナチス・ドイツの国民社会主義ドイツ労働者党（NSDAP）の公式機関紙であり、1920年に創刊されました。この新聞は、発行部数が最も多く、ナチ党の各支部や指導者たちが発行していた数多くの刊行物の中でも特に影響力を持っていました。最初は週刊として発行されていましたが、1923年からは日刊に移行しました。この新聞は、25年にわたりナチ党のプロパガンダ活動を支える重要な役割を果たしました。

創刊の背景

『フェルキッシャー・ベオバハター』の起源は、1918年に買収されたミュンヘンの業界紙『ミュンヒェナー・ベオバハター』に遡ります。トゥーレ協会がこの紙を買収し、1919年に名称を変更して新たなスタートを切りました。1920年12月にはナチ党がこの新聞を所有し、ディートリヒ・エッカートのもとでその運営が行われました。その後、フーゴ・マッハハウスやヘルマン・エッサーなどが編集長を務め、発行部数は初期の約8,000部から徐々に増加していきました。

発行部数の変遷

1923年のルール占領中には人気が高まり、発行部数は25,000部に達しました。同年11月のミュンヘン一揆の後、ナチ党は非合法化され、『フェルキッシャー・ベオバハター』も休刊に追い込まれました。しかし、1925年の党再結成に伴い復刊し、その発行部数はナチス党の権力拡大と共に急増していきました。1931年には12万部、1944年には170万部に達するに至ります。また、1938年からはヴィルヘルム・ヴァイスが編集長を務め、彼が在職中に刊行を続けました。

地方版と悪名高い記事

この新聞はベルリン版や南ドイツ版など、複数の地域版も発行されていました。特に悪名高い記事の一つには、1940年6月に行われた占領下ポーランド総督ハンス・フランクへのインタビューがあります。このインタビューは、ナチス党の厳しい政策と支配をも示すものとして知られています。

戦争末期の状況

第二次世界大戦末期には連合国軍の侵攻により発行が困難となり、最終号は1945年4月30日、南ドイツで印刷されたことが確認されています。しかし、アメリカ軍の侵攻によってその後の発行は行われなかったとされています。『フェルキッシャー・ベオバハター』は、ナチスの公式なメディアとしての役割を一手に担っており、戦争とその影響を如実に反映した新聞でした。

参考文献

• - Völkischer Beobachter – Historisches Lexikon Bayerns
• - 河面佑「政権獲得以前のナチス・プロパガンダにおける新聞の役割」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』

もう一度検索