フェルナンド1世 (ポルトガル王)

フェルナンド1世：ポルトガル中世の君主

フェルナンド1世（1345年 - 1383年）は、ポルトガル王ペドロ1世とコンスタンサ・マヌエルの息子として生まれました。その容姿から「美男王」とも呼ばれています。1367年に王位を継承してからの治世は、カスティーリャとの王位を巡る争いや、国内の政治的混乱など、激動の時代でした。

カスティーリャとの王位継承戦争

1369年、カスティーリャ王ペドロ1世が暗殺されると、フェルナンド1世はカスティーリャ王位の継承権を主張しました。彼は、自らがカスティーリャ王サンチョ4世の曾孫であることを根拠としました。アラゴン王ペドロ4世と同盟を結び、レオノール王女との婚約を画策しますが、最終的には教皇の仲裁によりカスティーリャとの和睦が成立。しかし、この争いは、ポルトガルとカスティーリャの関係に深い溝を刻みました。

愛と政治の葛藤

和睦後、フェルナンド1世は人妻であるレオノール・テレスに恋をし、彼女と結婚するために離婚させました。この強引な結婚は国民の反発を招き、リスボンでは暴動が発生しました。しかし、王妃レオノールの指示により、暴動の首謀者は処刑されました。この事件は、フェルナンド1世の政治手腕に対する国民の不信感を増大させる一因となりました。

イングランドとの同盟と再びカスティーリャとの戦い

1372年、フェルナンド1世はイングランドのジョン・オブ・ゴーントと同盟を結び、再びカスティーリャ王位を狙います。しかし、カスティーリャ軍にリスボンを包囲され、1373年に講和条約を結びました。1381年にもジョン・オブ・ゴーントと同盟を結びカスティーリャへ侵攻しますが、サルテスの海戦で敗北し、再び講和を結ぶことになります。この講和の条件として、王女ベアトリスがカスティーリャ王フアン1世と結婚することになりました。

王位継承問題とアヴィス朝の成立

フェルナンド1世には嫡出の男子がいなかったため、ベアトリス王女が王位を継承することになりました。しかし、ベアトリスとフアン1世の結婚は、ポルトガル国民の間にカスティーリャによる支配への不安を引き起こしました。フェルナンド1世の死後、ベアトリスが女王として即位しますが、国民はこれを認めず、フェルナンド1世の庶弟であるジョアンがカスティーリャ軍を撃退し、1385年にジョアン1世として即位、アヴィス朝を創始しました。

フェルナンド1世の治世は、カスティーリャとの戦争、国内の政治的混乱、そして王位継承問題と、多くの困難に満ちていました。彼の死後、ポルトガルは新たな時代を迎えることになります。

参考文献
* 安部眞穏「波瀾万丈のポルトガル史」（1994年 泰流社）

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