泰流社

泰流社について

泰流社（たいりゅうしゃ）は、経営が厳しい初等教育書の出版社を引き取り、社名を変更した出版社です。創業者は、印刷会社「誠之印刷株式会社」を運営していた西村允孝で、1998年に廃業するまで多彩な出版物を手掛けてきました。

第1期：教育図書の出版社

創業当初、泰流社は教育図書の出版に特化し、東京学芸大学附属竹早小学校や大阪教育大学附属池田小学校の実践記録などを製作していました。また、日本大学文理学部の浜田靖一教授が手掛けた「小学校体育教材シリーズ」は今でも高く評価されています。しかし、1970年代に入り、西村の広範な人脈を活かし、出版ジャンルは拡大しました。特に東京外国語大学の教授陣と協力し、多言語の入門書も刊行を開始しました。アラビア語やペルシャ語をはじめ、フィリピン語やルーマニア語などの語学書が発表されるなど、多角的な展開が行われました。

初代編集長は印刷会社から出向した小池幹男で、彼のもとでは新書サイズの一般書や「泰流選書」シリーズが発表され、一世を風靡するヒット作も輩出されました。一方で、文芸書分野にも進出し、文芸評論家の奥野健男との共同作品や、直木賞を受賞する書籍も登場しました。

1982年には、誠之印刷の倒産によって経営が困難になるものの、竹内貴久雄が編集長に就任し、社を再生すべく新たな出版社形態へと転換していきます。

第2期：新たな挑戦と変革

竹内編集長のもとで、泰流社はマイナー言語の語学書に特に力を入れ、新たに文化史や思想史分野にも進出しました。その結果、語学入門書としてブルガリア語やスワヒリ語等の発行が行われ、豊富なラインナップが展開されました。また、ビジネスマン向けの啓蒙書シリーズや実用書も始まり、多角的な出版活動が活発化しました。

この時期の人気作として、俵万智の歌集『サラダ記念日』のパロディ本『男たちの「サラダ記念日」』などが挙げられ、市場で大きな反響を得ました。

しかし、1986年11月に西村が経営していた誠隆印刷が再度倒産し、泰流社が印刷会社無しでの出版を余儀なくされ、不安定な経営状態に入ります。

第3期：マイナー言語の発展と再挑戦

その後、中江克巳が第3代編集長に就任し、主にマイナー言語の書籍に焦点を当てる出版設計が続きました。資金難に苦しみつつも、印刷品質は様々でしたが、出版点数は60点を超え、希少な言語の書籍を世に送り出しました。

1995年以降、西村の健康状態が悪化し、1998年には再起不能となり、4月30日に廃業の手続きが行われました。西村の死去により、長い歴史を持つ泰流社の幕が下ります。泰流社は、幅広い出版範囲の中で多くの挑戦と足跡を残しましたが、最終的にはその運命を閉じることになりました。

まとめ

泰流社は、創業当初から教育図書を軸に多様なジャンルに挑戦し、その後の日本語・マイナー言語の入門書や文芸事業に多大な影響を与えました。多岐にわたる出版物は没後も多くの読者に支持され、残された書籍たちは今も評価されています。

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