フェロン

フェロンとは

フェロン（ロシア語: фело́нь、ギリシア語: φαιλόνιο）は、正教会の司祭が着用する特別な祭服です。この服はイエス・キリストがピラトの法廷で着ていた紫色の衣服を象徴しており、そのデザインは古代からの伝統に根ざしています。フェロンは、カトリック教会のカズラ（チャズブル）に相当するもので、日本正教会ではこのように呼ばれています。また、ロシア語では「リザ」とも称されています。

歴史的背景

フェロンの由来は古代にさかのぼります。最初のフェロンは円筒形をしていて、全身を覆う構造でしたが、顔を出すための穴が開いているだけのシンプルなデザインでした。その後、司祭が奉神礼を執り行う際に便利にするため、丈ひもを使って調整できるように改善されました。現代のギリシャ正教会では、フェロンの昔の形が残されていますが、ロシア正教会では丈が短いスタイルが一般的です。

時が経つにつれ、フェロンの肩口には硬い材質を用いるようになり、高さが出るデザインへと進化しました。これにより、聖務を行う者の後ろから見ると、肩口が三角錐や台形の形に持ち上がっているのが特徴です。この変化は、フェロンが正教会の司祭の祭服として定着する過程で進化してきた証とも言えるでしょう。

フェロンの用途

フェロンは、初対面の司祭だけでなく、総主教や主教に至るまで、すべての聖職者が身にまとう祭服として重視されています。最初に総主教と府主教が着用し、その後主教たちも同様のスタイルに合わせて祭服を羽織るようになりました。今日では、フェロンは主に司祭が着用することが普通となっています。

材料とデザイン

16世紀から17世紀にかけて、フェロンには金襴などの重厚な布地が使用されることがありました。これにより、肩口に円錐形を形成し、より高い印象を与えることが目的でした。同時に、軽い生地のフェロンを作成する際には裏地に硬いカラーを用いて、形を保つ工夫もされています。このデザインスタイルは、当時のカトリック教会のカッパ・マグナから影響を受けたものであると言われています。

特に、誦経者祝福式の際には、誦経者がさらに短いフェロンを着ることが規定されています。

まとめ

フェロンは、正教会の祭服として長い歴史を持つ重要な衣装です。その形状や材料、用途は時代と共に変化してきましたが、司祭が神聖な儀式を執り行うための重要な象徴であり続けています。正教会におけるフェロンの役割を理解することで、より深い信仰の姿勢を持つことができるでしょう。

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