フェンダー・エスクワイヤー

フェンダー・エスクワイヤー：テレキャスターの起源と独自の個性

フェンダー・エスクワイヤーは、フェンダー社が製造するエレクトリックギターです。テレキャスターの原型として知られ、その歴史と独自のトーン回路は多くのミュージシャンを魅了し続けています。本稿では、エスクワイヤーの誕生から進化、そして著名な使用者まで、その魅力を多角的に探ります。

誕生と初期モデル

1949年秋、レオ・フェンダーの手によって試作されたエスクワイヤーは、後に世界的な人気を博すテレキャスターの礎となりました。初期モデルはコストを抑えるためパイン材を使用し、黒のラッカー塗装で仕上げられていました。しかし、1950年夏にはボディ材が高品質のアッシュ材に変更され、ブロンドのシースルー塗装へと進化。ネックには当初トラスロッドが搭載されていませんでしたが、ミュージシャンの意見を反映し、同年10月より追加されることとなりました。この際にネックに設けられたトラスロッド用の溝は、ウォルナット材の埋め木で覆われ「スカンクストライプ」と呼ばれています。ヘッドにも同様の埋め木「ブラウンエッグ」が存在します。

発表当初は1ピックアップと2ピックアップのモデルが存在しましたが、2ピックアップ仕様は後に「ブロードキャスター」と改名され、エスクワイヤーは1ピックアップ仕様のみに名称が限定されることとなりました。

エスクワイヤー・カスタムと初期の評価

1959年には、ボディにバインディングが施された高級モデル「エスクワイヤー・カスタム」が登場し、1970年まで製造されました。しかし、発表当初は「雪かきシャベル」や「弦の付いた板」など、辛辣な批評が向けられたという記録が残っています。

独自のトーン回路

エスクワイヤーの最大の特徴は、そのトーン回路にあります。外観はブロードキャスターと類似していますが、リアピックアップのみを搭載し、3ウェイ・セレクターの機能が大きく異なります。

一般的なテレキャスターは2ピックアップ搭載で、3ウェイ・セレクターによってピックアップの選択、トーンコントロールの調整が可能ですが、エスクワイヤーは独自の回路を内蔵しています。3ウェイ・セレクターは、リアピックアップの信号をバイパスしたり、トーンコントロールを有効にしたり、トーンを固定したりと、複雑な音色変化を実現します。

この独自のトーン回路は、多くのミュージシャンにとって魅力的な要素となっています。しかし、フロントピックアップを増設して通常のテレキャスターと同じ仕様で使用する場合もあり、その際にはトーン回路を取り外すことが多いようです。ボディ構造はテレキャスターと共通しているため、フロントピックアップの増設は比較的容易です。ZZトップのビリー・ギボンズはフェンダーに特注で、トーン回路の異なるエスクワイヤーを製作させたことでも知られています。

著名な使用者

エスクワイヤーは、数々の著名なギタリストに愛用されてきました。ブルース・スプリングスティーン、シド・バレット、デヴィッド・ギルモア、ジェフ・ベック、キース・リチャーズ、ポール・マッカートニー、ビリー・ギボンズ、忌野清志郎、仲井戸麗市、ケンゴマツモト、村越弘明、斉藤和義、フジイケンジ、生形真一、新藤晴一、ルーサー・パーキンスなど、多様な音楽ジャンルで活躍するミュージシャンがエスクワイヤーを選び、その独特の音色を表現してきました。多くのミュージシャンはフロントピックアップを増設して使用したり、ブリッジを交換したりと、個々の好みに合わせたカスタマイズを施しています。

まとめ

フェンダー・エスクワイヤーは、テレキャスターの原型でありながら、独自のトーン回路と歴史を持つ、魅力的なエレクトリックギターです。そのシンプルながらも奥深いサウンドは、多くのミュージシャンを魅了し続け、音楽史に大きな足跡を残しています。その歴史と進化、そして数々の著名な使用者から、エスクワイヤーの持つ特別な魅力を感じ取ることができるでしょう。

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