フェンダー・カスタム・ショップ

フェンダー・カスタム・ショップ：比類なきクラフトマンシップと伝説の楽器たち

フェンダー・カスタム・ショップ(Fender Custom Shop)は、フェンダー社が1987年に設立したカスタムオーダーメイド部門です。その卓越した技術とクラフトマンシップは、世界中のミュージシャンやコレクターを魅了し続けています。

誕生の背景：ビンテージ・レプリカ・ブームとフェンダー社の挑戦

カスタム・ショップ設立以前、フェンダー社では顧客からの特別注文を受け、個性を際立たせた「アート・ギター」と呼ばれる製品を製造していました。しかし、1970年代後半の日本における海賊版ビンテージ・レプリカ・ギターの急増は、フェンダー社の経営を圧迫する大きな要因となりました。高品質なコピー製品が市場を席巻し、フェンダー社の既存製品の魅力は薄れ、業績は低迷していました。

この危機を打開するため、フェンダー社はフジゲン株式会社との技術提携の下、1982年に自社製品の復刻版であるビンテージシリーズを発表。この試みは成功を収め、フェンダー社の復活の足掛かりとなりました。ビンテージシリーズの製作に携わったスタッフが、後にカスタム・ショップの中核を担うことになります。1985年に最高経営責任者となったビル・シュルツは、この精鋭たちを結集し、1987年、フェンダー・カスタム・ショップを設立しました。

極上の再現性：ヴィンテージへのこだわり

カスタム・ショップの使命は、単なる最新モデルの延長線上にあるものではありません。初期フェンダー社の楽器製作、その精神を深く理解し、現代に蘇らせることです。使用木材、パーツ、構造、塗装、そして経年変化による使用感に至るまで、当時のモデルを忠実に再現した製品群は、まさに時代を超えた芸術品です。

特に1965年のCBS買収以前のモデルに焦点を当てたラインナップは、コレクターやミュージシャンから高い評価を受けています。「カスタム・アーティスト」シリーズでは、著名なミュージシャンが使用した楽器を、傷やサビ、塗装の状態まで完璧に再現した、まさに芸術品と呼ぶべきモデルが制作されています。これらのモデルは、高額にもかかわらず発売と同時に完売するほどの人気ぶりです。

製造工程：マスタービルダーとチームによる卓越した技術

カスタム・ショップの製品は、製造工程によって大きく2種類に分類されます。

一つ目は、マスター・ビルダーによる「マスター・ビルト」です。木材の選定から加工、組み立てまで、全てを一人で手掛ける、まさに職人技の結晶と言えるモデルです。ビルダーの名前が製品名に冠されるため、ビルダーごとの個性を重視するコレクターにも人気です。

もう一つは、複数のビルダーによる共同作業である「チーム・ビルト」です。それぞれのビルダーが得意分野を持ち寄り、協力して製作を行うことで、高いクオリティを実現しています。数量限定生産の特別モデルも多く、カタログモデルにはない魅力が満載です。

エイジング加工：時間と歴史の痕跡を再現

カスタム・ショップの製品には、独特のエイジング加工が施されているものがあります。新品の状態を再現した「NOS（New Old Stock）」、長期間ケースに保管された状態を再現した「CC（Closet Classic）」、そして長期間の使用による傷や塗装の剥がれなどを再現した「Relic」の3種類が主な加工方法です。これらエイジング加工は、単なる装飾ではなく、楽器の歴史と時間の流れを肌で感じさせる重要な要素となっています。

著名ミュージシャンとのコラボレーション：シグネチャー・モデル

カスタム・ショップでは、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなど、数々の著名なミュージシャンとのコラボレーションにより、彼らの愛用楽器を忠実に再現したシグネチャー・モデルを製作しています。これらのモデルは、ミュージシャン本人が関与したものであり、世界中のファンから絶大な支持を得ています。

フェンダー・カスタム・ショップの未来

フェンダー・カスタム・ショップは、単なる楽器メーカーではありません。それは、伝統と革新を融合させた、比類なきクラフトマンシップの象徴です。これからも、時代を超えた名器を生み出し続け、世界中の音楽愛好家を魅了し続けることでしょう。

もう一度検索