フォクシーの怪電車

フォクシーの怪電車：夢と現実が交錯する、陽気な路面電車の旅

1931年、ワーナー・ブラザースが制作したアニメーション短編映画『フォクシーの怪電車』（原題：Smile, Darn Ya, Smile!）は、メリー・メロディーズシリーズの中でも初期に制作された重要な作品の一つです。本作は、陽気な路面電車運転手フォクシーを中心に、コミカルで予測不能な出来事が次々と展開する、テンポの良い物語となっています。

映画は、フォクシーが路面電車を運転しながら軽快な歌を歌い、猫のベルを鳴らして出発するシーンから始まります。道中では、体格の大きなカバの乗客を乗せようとするものの、電車のサイズが小さすぎて断念。フォクシーは髪留めを使ってカバの体から空気を抜こうとしますが、カバは気分を害して去ってしまいます。

その後、フォクシーはガールフレンドのロキシーと出会い、二人は電車の中で歌い始めます。その歌声に影響されたのか、電車の広告までもが踊り出し、賑やかな雰囲気に包まれます。しかし、平和な時間は長くは続かず、線路上に現れた牝牛によって電車は停車を余儀なくされます。フォクシーはベルを鳴らしたりしますが、牝牛はつばを吐きかけるなど、全く意に介しません。

その様子を眺めていたホームレスたちは、フォクシーを囃し立てるように歌を歌い始めます。さらに、近くで煮られていた鶏までもが鳴きだし、騒動はさらにエスカレートしていきます。しかし、ホームレスの一人がおたまで鶏を殴り、「boil, darn ya, boil!」と叫ぶと、騒ぎは一旦収まります。

フォクシーはついに我慢の限界を超え、電車を強引に牝牛の下を通過させようとします。なんとか通過したものの、不機嫌そうな牝牛の姿を見てフォクシーとロキシーは笑います。しかし、その瞬間、線路が縦に伸縮し、激しい衝撃でフォクシーは電車から放り出されてしまいます。

急勾配の坂道に差し掛かった電車は加速し、ロキシーは助けを求めます。フォクシーは必死に電車を止めようとしますが、縄と木を使っての試みは失敗に終わり、逆に電車に巻き込まれてしまいます。ブレーキをかけようとしますが、時既に遅く、二人はパニックに陥ります。トンネルをいくつか通過した後、ついに電車は線路の終点から崖下に転落します。

しかし、これは全てフォクシーの夢でした。夢から覚めたフォクシーは怒り狂い、ベッドの脚を引き千切り、ラジオを殴り倒します。そして、笑いながら「じゃまたな!」（So long, folks!）と言い残し、画面は暗転します。

この作品は、フォクシーというキャラクターが初めて登場した作品であり、彼の陽気さと少し抜けたキャラクター性が際立っています。また、当時としては高度なアニメーション技術も用いられており、初期アニメーション作品の中でも高い評価を得ています。夢と現実が入り混じる展開や、独特のユーモアセンスは、現代においても新鮮な驚きを与えてくれるでしょう。様々な要素が詰め込まれた、何度見ても楽しめる魅力的な作品です。

さらに、本作は『トロリー・トラブルズ』という作品のリメイクともされており、牝牛やトンネルのシーンなどは共通しています。劇中歌「Smile, Darn Ya, Smile!」は、後の作品でも何度も使用されており、その人気ぶりが伺えます。フォクシーはその後もいくつかの作品に登場しますが、本作は彼のキャラクター性を決定づける重要な作品と言えるでしょう。

本作のスタッフには、ルドルフ・アイジング（監督、ノンクレジット）、フリッツ・フレリング、カーマン・マクスウェル（作画）、フランク・マーセルズ、エイブ・ライマン（音楽）といった、当時のアニメーション界を代表する才能が集結していました。彼らの技術と創造性が融合した結果、この傑作が誕生したのです。

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