フォクシー・レディ

1980年に公開されたアメリカ合衆国の映画『フォクシー・レディ』（原題: Foxes）は、後に『フラッシュダンス』や『ナインハーフ』などを手がけるエイドリアン・ライン監督の記念すべきデビュー作である。音楽は、『フラッシュダンス』でもタッグを組むことになるジョルジオ・モロダーが担当しており、1980年代らしいシンセサイザーを多用したサウンドが、若者たちの不安定な心情や都会的な雰囲気を彩っている。主演は実力派女優のジョディ・フォスターが務め、その他にもガールズ・ロックバンド「ザ・ランナウェイズ」のリード・ボーカルとして知られるシェリー・カーリーが出演し、印象的な演技を見せている。

物語の舞台は、1970年代後半の南カリフォルニア、サンフェルナンド・バレー。主人公は16歳の少女、ジーニー（ジョディ・フォスター）。彼女は、アニー（シェリー・カーリー）、マッジ（マリリン・ケーガン）、そしてディアドル（キャンディス・ストロー）という三人の親しい友人たちと常に一緒に時間を過ごしている。この四人組は、それぞれが複雑な家庭環境や個人的な問題を抱えており、現実世界での孤独や生きづらさから逃れるように、互いの存在に深く依存し、強い絆で結ばれている。彼女たちの共通の願いは、いつかすべての困難から解放され、四人で一緒に暮らすことだった。

しかし、彼女たちの日常は常に不安定で、様々な問題が影を落とす。特にアニーは麻薬に深く依存しており、そのことが物語に暗い展開をもたらす。ある日、警察官であるアニーの父親は、彼女を強制的に病院へ入院させようとするが、アニーはそれに反発し、街へと逃亡してしまう。友人としてアニーを深く心配したジーニーたちは、彼女の行方を探して奔走する。苦労の末、彼女たちはアニーがストリート・ギャングと危険な関係を持っているのを発見し、間一髪のところで彼女を安全な場所へと救い出すことに成功する。

アニーを救出し、束の間の平穏が訪れるかと思われたが、事態はさらに悪化する。マッジのボーイフレンドであるジェイ（ランディ・クエイド）の家を借りて開催されたパーティで、招かれざる部外者であるチンピラ・グループが乱入し、会場は大混乱となる。この暴力的な事件は、それまで固く結ばれていた四人の友情に深い亀裂を生じさせるきっかけとなってしまう。それぞれの異なる反応や感情のずれが明らかになり、彼女たちの関係性は修復不可能なほどに傷ついていく。

さらに追い打ちをかけるように、父親の意向によって再び病院に収容されていたアニーが、自由を求めて脱走を図る。しかし、その逃走劇は悲劇的な結末を迎えることになる。アニーが乗り込んだ車が事故を起こし、帰らぬ人となってしまうのだ。親友の死は、残されたジーニーたちの心に深い傷跡を残し、彼女たちはそれぞれの方法でこの悲劇と向き合わざるを得なくなる。

『フォクシー・レディ』は、家庭問題、麻薬、性、暴力といった当時の社会が抱える問題の只中で、傷つきながらもがき生きる少女たちの姿をリアルかつ感傷的に描き出している。四人の少女たちの揺れ動く友情、そして避けがたい悲劇を通して、青春期の脆さや喪失の痛みが鮮烈に描かれ、観る者に強い印象を残す作品となっている。

主要キャストには、ジーニー役のジョディ・フォスター、アニー役のシェリー・カーリーのほか、マッジ役にマリリン・ケーガン、ディアドル役にキャンディス・ストローが名を連ねる。また、後の活躍が目覚ましいローラ・ダーンがデビー役で出演しているのも注目に値する。

本作は、ライン監督特有のスタイリッシュな映像表現の萌芽も見られる一方で、若者たちの内面的な苦悩や社会との断絶を真正面から捉えた、青春映画の傑作として位置づけられている。特に、不安定な時代を生きる十代の少女たちのリアルな感情や行動が、観る者の共感を呼び起こす。

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