フォゴ島

フォゴ島：燃える島の豊かな自然と歴史

カーボベルデ共和国、ソタヴェント諸島に位置するフォゴ島は、その名の通りポルトガル語で「火」や「炎」を意味します。島全体が巨大な成層火山であるフォゴ山によって形成されており、活火山であるフォゴ山は島の最も顕著な特徴であり、フォゴ島のアイデンティティそのものと言えるでしょう。

地理的に、フォゴ島は同じソタヴェント諸島のサンティアゴ島とブラヴァ島の間に位置しています。事実上、島全体が周期的な噴火活動を繰り返す活火山となっており、火山のダイナミックな地形が広がっています。フォゴ山の中央には最大で幅9キロメートルにも及ぶ広大なカルデラがあり、その外縁は高さ1キロメートルに達します。カルデラの東側の縁には大きく裂けた部分があり、中央にそびえる円錐形の山頂は、カルデラ外縁よりもさらに100メートルほど高く、島の最高地点となっています。火口から流れ出た溶岩が島の東海岸にまで達した痕跡も見られます。カルデラ内部にはシャ・ダス・カルデイラスという小さな集落があり、火山観測の拠点となっていますが、噴火の際には住民が一時的に避難を余儀なくされることもあります。近年では、1995年に比較的大きな噴火があり、ピコ・レケノと呼ばれる新たな火口が形成されました。

島の行政の中心地は、西海岸に位置するサン・フェリペです。ここには空港があり、島の玄関口としての役割も担っています。サン・フェリペには1480年代には既に最初の定住が始まっていたとされ、古典的なポルトガル植民地時代の建築様式を残す美しい建物が並んでいます。島の主要産業は古くから農業が中心です。サン・フェリペに次ぐ島の第二の町は、北東部に位置するモステイロスです。

フォゴ島の地形は多様です。南西部の土地は比較的肥沃で農業に適していますが、北側と東側は急斜面が多くなっています。島全体は、海底からそびえ立つカダモスト海山の一部であり、その周辺の海は非常に深く、海岸からわずか5キロメートルほど離れた地点で水深が5,300メートルにも達する場所があります。西側の一部を除いて、海底ではさらに西にあるブラヴァ島が形成する別の海山と繋がっています。

植生は地域によって異なります。北東部の丘陵地帯は一年を通じて緑の草で覆われていますが、山岳地帯は乾燥して不毛な様相を呈しています。カーボベルデの中でも南端に近い島の一つであるフォゴ島は、比較的多くの降雨がありますが、小川や渓流は年間を通して乾いていることが多いです。島には特有の植物や、ケープベルデミズナギドリのような鳥類、爬虫類など、固有種が多く生息しており、生態学的に重要な地域です。周辺の海域にもアオウミガメ、ヒメウミガメ、マイルカなどの多様な海洋生物が見られます。これらの豊かな自然環境が評価され、2020年にはユネスコの生物圏保護区に指定されました。

フォゴ島の歴史は、1460年にジェノヴァ人航海者アントニオ・ノリによって「発見」され、サン・フェリペ島と名付けられたことに始まります。その後、1500年にはポルトガル人が入植し、島は奴隷貿易の拠点の一つとして利用されました。1850年頃からは、多くの島民が主に北アメリカなど海外への移住を開始しました。20世紀初頭のポルトガルでの政変（1910年10月5日革命）の影響で、島の大土地所有者であった貴族階級が追放され、本国へ帰国して市民権を放棄するという出来事もありました。フォゴ島の名が定着したのは、1680年の激しい噴火がきっかけです。この噴火は非常に大規模で、100キロメートル離れた場所からも数年間にわたって噴煙や火映が見えたと記録されており、この強烈な「火」の印象から島はフォゴと呼ばれるようになったと言われています。

言語については、カーボベルデの公用語はポルトガル語ですが、フォゴ島の住民が日常的に使用するのは、カーボベルデ・クレオール語のフォゴ方言です。

島の経済は、長らく農業と漁業に大きく依存してきました。しかし近年は観光業も徐々に重要な産業として成長しており、火山そのものやカルデラ内のシャ・ダス・カルデイラス、歴史的な街並みが残るサン・フェリペなどが人気の観光地となっています。フォゴ島の特産品としては、特にコーヒーとワインが有名です。また、フォゴ島の経済、特に多くの家庭の家計は、海外に移住した人々からの送金によって大きく支えられています。これらの旧島民は、たとえ遠く離れて互いの顔を知らなくなっても、故郷に残った親戚への送金を続けており、故郷を訪れる際には観光を兼ねてフォゴ島を訪れることも少なくありません。島の基礎自治体としては、サン・フェリペとモステイロスの二つがあります。

スポーツではサッカーが盛んで、アカデミカ・ド・フォゴやボタフォゴ、ヴルカニコスといった複数のサッカークラブが島を本拠地として活動しています。また、フォゴ島はカーボベルデの著名な政治家や文化人を輩出しています。

このように、フォゴ島は噴火活動を続ける活火山としてのダイナミズムと、歴史、文化、そして豊かな自然が共存する魅力的な島です。

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