フォッカー Dr.I

フォッカー Dr.Iについて

フォッカー Dr.I（ローマ数字のIは1を示す）は、第一次世界大戦の1917年にドイツ帝国のフォッカー社によって製造された三枚翼の戦闘機です。特に、著名な撃墜王である「レッドバロン」マンフレート・フォン・リヒトホーフェンがこの機体を愛用したことで、その名は広く知られています。

概要

フォッカー Dr.Iは、フォッカー社の技術者であるラインホルト・プラッツが手掛けました。彼は、英軍の三葉戦闘機ソッピース トライプレーンを参考にし、その性能に影響を受けて、より優れた三枚翼機の開発に取り組みました。型式名の「Dr.」は、ドイツ語で三葉を意味する「Dreidecker」に由来していますが、実際には主脚間にも翼があり、厳密には四枚機に近い構造を持っていました。

この機体は、非主流の回転式空冷星型エンジンを採用し、操作のしやすさを考慮して操縦桿にさまざまな機能が配置されています。具体的には、補助スロットルや機銃の射撃、クーペボタンまでが右手で簡単に操作できるようになっています。武装はプロペラと同調して発射されるMG08重機関銃が機首に2丁装備されています。

フォッカー Dr.Iは、初期の量産機において翼の付け根の強度に不具合が見つかり、改修に多くの時間を要しました。それにもかかわらず、機体はコンパクトで羽根のアスペクト比が大きく、優れた運動性を誇っていました。飛行性能としては、やや遅いものの、優れた上昇能力を備えており、実際にはソッピース キャメルよりも空気抵抗が少なかったと言われています。特筆すべきは、ラダーを踏み込むことによって180度の急旋回が可能であった点です。

課題と欠陥

ただし、フォッカー Dr.Iは視界に関する重大な課題を抱えていました。特に離着陸時に機首を上げると前方が全く見えなくなるほど視界が悪く、これは主翼が厚みをもっているためでした。また、視界を改善する工夫がほとんど施されておらず、着陸時の事故が頻発しました。さらに、翼の構造的な欠陥も報告されており、実際に運用中に上翼が取れてしまったという危険な事例も存在しました。これにより、操縦は簡単ではなく、事故のリスクが高まる結果となりました。

戦闘での活躍

フォッカー Dr.Iは、特に格闘戦においてその機動性を生かして活躍しました。ヴェルナー・フォスによる戦闘が著名で、彼は数々のイギリス機を相手に数で劣るにもかかわらず成果を上げ、21日間で22機を撃墜する偉業を達成しました。また、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンも多数のDr.Iを愛用し、赤く塗装された機体で戦場を駆け巡りました。しかし、彼が撃墜された後、1918年中盤からは連合軍機に対する性能が劣るようになり、その結果次第に退役に追い込まれました。戦争終結時には練習機としてのみ残る状況となりました。

要目（1918年）

• - 初飛行：1917年
• - 乗員：1人
• - 全長：5.77m
• - 全幅：7.18m
• - 高さ：2.98m
• - 総重量：585kg（自重405kg）
• - 最大速度：160km/h（高度2,800mで）
• - 失速速度：64km/h
• - 上昇力：2,000mまで3分45秒
• - 実用上昇限度：6,000m
• - 飛行時間：1.5時間
• - エンジン：オーバーウルゼル Ur.II空冷回転星型9気筒110馬力エンジン×1基
• - 武装：MG08/15シュパンダウ 7.92mm機関銃×2（前方固定）

このように、フォッカー Dr.Iはその独自の設計と性能によって第一次世界大戦の航空戦史に名を刻みましたが、同時にその欠陥もまた多くの教訓を残しました。

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