フォッカー T.IX

フォッカー T.IX

フォッカー T.IXはオランダのフォッカー社によって設計・製造された爆撃機で、オランダにおける全金属製航空機の初の試みとして注目されました。この航空機は戦前のフォッカー社の中でも最も重い機体の一つで、デザインを担当したのはマリウス・ビーリング技師でした。彼はこれまでにD.XXIIIなども手がけており、この機体もその技術が活かされています。

概要

T.IXは、オランダ王立東インド陸軍航空隊（ML-KNIL）向けに設計され、あの著名なマーチン B-10の後継機としての役割を期待されていました。しかし、試作機としての製造に留まり、正式に部隊に配備されることはありませんでした。実際、オランダ本国の陸軍航空隊もフォッカー T.Vの後継機を求めていましたが、その興味が実を結ぶことはありませんでした。ML-KNILとのフォッカー社との交渉は迅速に進められましたが、それも過去の要求と変わらず、仕様書のみに基づく発注だったのです。

1939年9月10日、T.IXはスヒップホルにてT.H.リーグストラ大尉の操縦によって初めて空を飛びました。飛行試験は順調に進み、離陸後すぐに着陸装置が引き上げられる状況も見られました。この試作機には最初に登録番号970が付与され、その後2週間後には蘭印での登録番号701が与えられました。

しかし、1940年3月8日にスヒップホルでの着陸時に着陸装置の折りたたみにより損傷を受け、その後の修理中も格納庫の扉に主翼を当ててしまう事故が発生しました。これが原因で、再び空を飛ぶことはなかったのです。最終的に試験飛行の回数は50回、総飛行時間も30時間8分に達しました。

第二次世界大戦とその後

第二次世界大戦が進行する中で、オランダが降伏するとT.IXはドイツの手に渡ります。しばらくして、イギリス製エンジンが取り外され、研究目的でドイツに移送されました。機体はその後放置されましたが、連合軍によるスヒップホルへの攻撃によって損傷を受けました。損傷されたままの機体は、デルフトの工科大学やギルゼ=レイエンで保管され続け、1960年には廃棄される運命にありました。

性能諸元

• - 乗員: 5名
• - 全長: 16.50 m
• - 翼幅: 24.70 m
• - 全高: 5.10 m
• - 翼面積: 88.30 m²
• - 自重: 6,500 kg
• - 全備重量: 11,200 kg
• - エンジン: ブリストル ハーキュリーズ空冷複列星型発動機 1,375 hp × 2
• - 最大速度: 440 km/h
• - 航続距離: 2,720 km
• - 実用上昇限度: 8,000 m
• - 武装: 20 mm機銃 × 1（機首）、12.7 mm機銃×2（後背部、腹部）、最大2,000 kgまでの爆弾

このように、フォッカー T.IXはオランダの航空機技術の進展に寄与しましたが、正式な運用には至らなかったことが残念です。

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