フォト・セセッション

フォト・セセッション：アメリカ・ピクトリアリズムの中核

フォト・セセッション(Photo-Secession、写真分離派)は、20世紀初頭のアメリカで活躍した、画期的な写真家集団でした。ニューヨークを拠点に、ピクトリアリズムという写真表現様式を推進し、アメリカにおける写真の芸術的地位確立に多大な影響を与えました。

スティーグリッツと仲間たち

中心人物は、写真家であり、画商でもあったアルフレッド・スティーグリッツです。彼は、エドワード・スタイケン、アルヴィン・ラングダン・コバーンといった才能豊かな写真家たちとともに、1902年にフォト・セセッションを結成しました。他にも、フランク・ユージン、クラレンス・H・ホワイト、ガートルード・ケーゼビアといった著名な写真家が参加し、それぞれの個性と技量を活かし、グループ活動を支えました。スティーグリッツは、保守的な写真家集団を排除し、革新的な写真表現を探求するメンバーを選び抜いたことで知られています。当初は国立芸術センター設立を目指していましたが、最終的にフォト・セセッションという独自の集団として活動を始めました。

活動の柱：機関誌とギャラリー

フォト・セセッションは、2つの重要な活動拠点を持っていました。1つは、グループの機関誌である「カメラワーク」(Camera Work)です。1902年に創刊され、1917年まで計50号が発行されました(合併号や特別号なども含む)。高品質な印刷と洗練されたデザインで知られ、当時の写真芸術の最先端を広く紹介する役割を果たしました。創刊時期については、文献によって1902年説と1903年説がありますが、創刊号の発行時期から判断すると1902年12月が正確とされています。

もう1つは、ニューヨークに設立された「フォトセセッションの小ギャラリー」(Little Galleries of Photo-Secession)です。1905年に開設され、1908年には「291ギャラリー」と改称されました。このギャラリーは、フォト・セセッションの作品展示の場であると同時に、現代美術やヨーロッパの美術作品なども展示し、新しい芸術表現の受容に貢献しました。1917年に閉廊しました。

ピクトリアリズムの普及と展開

フォト・セセッションは、ロンドンの「リンクト・リング」と並び、ピクトリアリズム運動の双璧をなす存在として、この運動の普及に大きく貢献しました。ピクトリアリズムとは、写真に絵画的な表現を取り入れ、芸術性を高めようとする写真表現様式です。フォト・セセッションは、その洗練された作品と積極的な活動を通じて、アメリカにおけるピクトリアリズムの隆盛を牽引しました。

国際展と解散

1910年には、ピクトリアリズムの集大成とも言える「絵画主義写真国際展」をニューヨーク州バッファローのオルブライト・アート・ギャラリーで開催しました。しかし、この国際展の後、フォト・セセッションは解散しました。明確な解散宣言はありませんでしたが、1910年説と1917年説があり、1910年から1917年の間にあると考えられています。

スティーグリッツの転向とフォト・セセッションの遺産

スティーグリッツは、フォト・セセッションを通してアメリカへのピクトリアリズムの普及に成功しましたが、「絵画主義写真国際展」開催頃には、既にストレートフォトグラフィーという、より写実的な写真表現へと傾倒しつつありました。結果的に、彼はピクトリアリズムを否定する立場に転じました。しかし、フォト・セセッションの活動は、アメリカ写真史に大きな足跡を残し、後の写真表現に多大な影響を与えました。

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