アルヴィン・ラングダン・コバーン

アルヴィン・ラングドン・コバーン（1882年6月11日 - 1966年11月23日）は、20世紀前半にアメリカで活躍した写真家です。後にイギリスへ移住していますが、彼のキャリアはアメリカとイギリスの両方で展開されました。アルヴィン・ラングドン・コバーンと表記されることもあります。

サロン写真時代

1882年、ボストンに生まれたコバーンは、当初は美術を学んでいました。しかし、写真家であった従兄のF・ホーランド・デイの影響を受け、写真の世界へと足を踏み入れます。その才能は早くから開花し、1900年には18歳にしてロンドンサロンで作品が展示されるなど、早熟の天才として注目を集めました。

1902年には、アルフレッド・スティーグリッツらとともに「フォト・セセッション」の創立会員となり、ピクトリアリスム運動の中心人物の一人となりました。また、「リンクトリング」にも参加し、絵画的な表現を追求した多くの作品を残しています。彼の作品は「カメラ・ワーク」に掲載され、ニューヨークの291ギャラリーでも個展が開かれるなど、高い評価を得ていました。

1906年、23歳の時には、大英王立写真協会が彼の個展を開催しています。この時期の代表的な作品としては、1909年に出版された写真集『ロンドン』、1912年の『ニューヨーク』、そして1913年の『メン・オブ・マーク』とその続編（1922年）があります。これらの作品は、ソフトな描写を特徴とするサロン写真のスタイルでありながら、人物の内面を捉える確かな描写力を持っており、日本の営業写真家にも影響を与えたとされています。

抽象写真時代

しかし、コバーンの真の才能が発揮されたのは、写真における抽象表現の分野でした。1913年のロンドンでの個展では、高層建築の上から真下の広場や街路、建物を俯瞰的に撮影した『頂上から見たニューヨーク』という5枚の作品を展示しました。これらの作品は、遠近感を排除し、抽象的なパターンとして構成されており、従来のピクトリアリスムとは異なる新しい表現を提示しました。

さらに、コバーンはヴォーティシズムの影響を受け、独自の写真機「ヴォルトスコープ」を制作しました。この特別な写真機は、三角形に接続された3枚の鏡の中にカメラレンズを突き出して撮影するもので、1917年には、極めて抽象的な写真作品『ヴォルトグラフ』を生み出しました。これらの作品は、写真における抽象表現の可能性を大きく広げたものとして評価されています。

コバーンは、ピクトリアリスムだけでなく、ストレートフォトグラフィの作品も残しましたが、スティーグリッツのように完全にストレートフォトグラフィに移行することはありませんでした。彼は、ピクトリアリスムの要素を残しながら、独自の抽象的な表現を追求し続けました。

1918年、コバーンは北ウェールズに移住し、間もなく写真界から引退します。1966年11月23日に北ウェールズで亡くなりました。早期の引退のため、当時、彼の名前を知る人は多くありませんでした。

外部サイト

George Eastman House
Master of Photography

図版

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脚注

参考文献

『アサヒカメラ1967年8月号』朝日新聞社

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