フォルクスワーゲン・コラード

フォルクスワーゲン コラード：ゴルフとパサートの融合が生んだスポーツクーペ

フォルクスワーゲン コラードは、1988年から1995年にかけてフォルクスワーゲンが製造・販売した3ドアハッチバッククーペです。その名前はスペイン語で「疾走する」を意味する言葉に由来しており、そのスポーティな性格を表しています。事実上、人気モデルであったシロッコの後継車種として位置づけられていました。

ゴルフIIとパサート、そしてスポーツカーとしての志向

コラードは、フォルクスワーゲン初のリアルスポーツカーとして開発されました。ポルシェ944をライバルに据え、カルマン社との共同開発によって誕生しました。プラットフォームは、フロント部分はゴルフIIと共通のA2プラットフォーム、リア部分は3代目パサートと共通のB3プラットフォームを採用するなど、ゴルフIIとパサートの技術を巧みに融合させています。そのため、内装もゴルフIIではなく、パサートのデザインを踏襲しており、ゴルフIIとパサートの中間的なグレードと言えるでしょう。

走りへのこだわりと先進技術

コラードは、2+2名乗りのコンパクトな車体ながら、スポーティな走りを実現しました。リアオーバーハングは短く、ラゲッジスペースは狭めでしたが、リアシートを倒すことで容量の拡大が可能でした。特徴的なのは、70km/h（後に90km/hに変更）で自動展開し、20km/hで自動格納される速度感応式のリアスポイラーです。もちろん、手動での操作も可能です。
安全装備についても、当時としては先進的なEDS（エレクトロニック・ディファレンシャルロック・システム）やABSを標準装備し、後に運転席と助手席のエアバッグも標準装備となりました。タイヤサイズはモデルライフを通じて変更が繰り返されました。

エンジンバリエーション：G60、VR6、16V

コラードには、3種類のエンジンバリエーションが用意されていました。

G60: G-Laderと呼ばれるスーパーチャージャーを搭載した1,780cc直列4気筒SOHCエンジンと5速MTの組み合わせ。最高出力160PS、最大トルク22.9kg・mを発揮しました。VR6と16Vの登場によって生産終了となりました。
VR6: パサートと共に初めてフォルクスワーゲン車に搭載された狭角V型6気筒SOHCエンジンを搭載。コラード用は2,861ccに排気量拡大された強化仕様でした。5速MTに加え、コラードとして初めて4速ATも設定されました。最高出力190PS、最大トルク25.0kg・mを発揮しました。G60の後継モデルと言えるでしょう。
* 16V: ゴルフGTI 16Vにも搭載された1,984cc直列4気筒DOHC16Vエンジンを搭載。5速MTと4速ATが選択可能でした。日本市場では400万円を切る価格設定で、エントリーモデルとして位置づけられました。最高出力135PS、最大トルク18kg・mを発揮し、VR6よりも早く生産終了となりました。

販売と生産終了

コラードは、1988年に欧州で発売開始。1990年には日本と北米にも導入されました。1991年にはマイナーチェンジが行われ、外観や装備に細かい変更が加えられました。その後、VR6、16Vが追加されるなど、モデルバリエーションを拡充。しかし、販売台数は伸び悩みました。1995年に生産が終了し、直接の後継車は登場しませんでした。フォルクスワーゲンの2ドアクーペモデルは、2006年のイオス登場まで空白期間となりました。そして、2008年にはシロッコが復活し、コラード以来となるフォルクスワーゲン製スポーツクーペが再び市場に登場することになります。

日本市場におけるコラード

日本市場では、左ハンドル仕様で輸入販売されました。イギリスなどでは右ハンドル仕様も販売されていた点が対照的です。また、各エンジンバリエーションの導入時期も欧州とは異なっていました。

コラードの遺産

スポーツカーとしての高い評価を受けながらも、商業的な成功には至らなかったコラードですが、フォルクスワーゲンのスポーツクーペの歴史において重要な位置を占めるモデルです。そのデザインと技術は、後のフォルクスワーゲン車に影響を与えたことは間違いありません。 マクラーレンF1のドアミラーがコラードのものと共通であるという興味深い事実も残されています。

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