フォート・スティーブンス砲撃

フォート・スティーブンス砲撃

フォート・スティーブンス砲撃は、第二次世界大戦中の1942年6月、日本海軍によるアメリカ本土への攻撃の一環として行われました。この事件は、日本軍がアメリカの防衛拠点を直接攻撃した数少ない事例の一つです。

背景

1942年6月、日本海軍の潜水艦伊号第二十五潜水艦（伊25）がアメリカのオレゴン州コロンビア川河口にあるフォート・スティーブンス陸軍基地を砲撃しました。当時、伊25は通商破壊と地上攻撃を目的に行動しており、その艦長である田上明次少佐は、特殊な任務を遂行するために出発しました。伊25は、魚雷と14cmの甲板砲を装備し、乗員は97名でした。

砲撃の実施

1942年6月14日、伊25はオレゴン州沿岸に接近しました。この際、漁船の航跡を利用してアメリカ海軍が設置した機雷原を回避したとされています。6月21日の夜22時30分頃、伊25は浮上し、田上は誤ってフォート・スティーブンスを潜水艦基地だと認識して地上攻撃を決定しました。

フォート・スティーブンスは南北戦争時代に設立された施設で、第二次世界大戦中は約2,500名の兵士が駐屯していました。基地には12インチもの旧式迫撃砲や10インチ隠顕式砲台が設置されていました。田上はこの基地の砲兵陣地、特にラッセル砲台への攻撃を指示しましたが、最初の砲撃では目立った被害は出ませんでした。基地側では灯火管制が行われていましたが、応射はしていません。混乱の中で監視塔から潜水艦を目視していたものの、「敵艦は射程距離外」と誤った報告が出ていたため、フォート・スティーブンスの司令官は応戦を避け、静止したままでいるよう命じました。

その後、伊25はおよそ16分間に17発の砲撃を行いました。これらの砲弾の多くは、基地の近くの野球場や沼地に命中しましたが、一発はラッセル砲台の近くに着弾し、別の一発は電話線を切断して広範囲にわたって通信を阻害しました。さらに、この攻撃でアメリカ軍の送電線や野球場のバックネットも破壊されるなどの影響を及ぼしました。最終的には、1名の兵士が戦闘配置に就く際に負傷したのみでした。

攻撃後の対応

攻撃が行われた後、訓練中の航空機が伊25を発見し、そこから通報を受けたA-29ハドソン攻撃機が出撃しました。ハドソン攻撃機は伊25に対して攻撃を実施しましたが、損傷を与えることはできませんでした。

結果と影響

この一連の交戦では、生死者は出ませんでしたが、アメリカ本土への攻撃の恐怖が高まり、特に西海岸では防衛策が強化されました。オレゴン州のポイント・アダムス沿岸部には防護用の鉄条網が張り巡らされ、難破船の残骸も使われて防塞が設置されました。また、砲撃の一発がゴルフ場に命中し、現在はその場所に記念碑が建てられています。

この事故後も伊25は作戦を続け、同年9月には小型水上機を使ってアメリカ本土への爆撃を成功させる（ルックアウト空襲）といった行動に移ります。フォート・スティーブンス砲撃は、米英戦争以来のアメリカ本土に対する攻撃であり、第二次世界大戦中における唯一の例でもあります。

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