フォート・ユースティス

フォート・ユースティスは、アメリカ合衆国バージニア州ニューポート・ニューズの近郊に広がる、アメリカ陸軍にとって極めて重要な施設です。かつて独立した基地でしたが、2010年に近隣のラングレー空軍基地と統合され、現在はラングレー・ユースティス統合基地の一部を形成しています。

この施設は、アメリカ陸軍の陸軍訓練教義コマンド（TRADOC）の本拠地であり、陸軍の戦略や訓練方法の研究開発の中心となっています。他にも、航空機に関する兵站を担う陸軍航空兵站学校、陸上輸送を専門とする第7輸送旅団など、陸軍の根幹を支える主要な組織や部隊が置かれています。さらに、陸軍訓練支援センターや陸軍航空応用技術管理部といった重要な機関もフォート・ユースティスに所在しています。附属施設であるフォート・ストーリーでは、士官や下士官兵に対し、輸送、航空整備、兵站などに関する専門的な教育や実技訓練が実施されており、陸軍の人材育成に大きく貢献しています。

歴史を遡ると、フォート・ユースティスが位置するジェームズ川沿いの低地は、植民地時代にはマルベリー島として知られていました。1607年のジェームズタウン創設後まもなくイギリス人入植者が定住し、1610年には、植民地を放棄しようとしていた入植者たちが、デラウエア卿の説得により留まることを決意するという歴史的な出来事の舞台となりました。この時期、ジョン・ロルフが入植した際に持ち込んだタバコの種子が、後に植民地の経済を支える重要な換金作物へと成長しました。

南北戦争中には、マルベリー島のフォート・クラフォードが、南軍の防御線であるウォリック・ラインの南端を固める砦として機能しました。

フォート・ユースティスが軍事施設として設立されたのは第一次世界大戦中のことです。1918年3月、陸軍は軍事力増強のためこの地域を買い上げ、キャンプ・アブラハム・ユースティスを設立しました。これは、初代フォート・モンロー司令官であった准将アブラハム・ユースティスの名にちなんでおり、当初は沿岸砲兵の補充兵訓練や気球観測学校が置かれました。

附属施設として、1918年にはジェームズ川沿いに砲兵訓練場であるキャンプ・ウォレスが創設されました。ここでは、荒地や崖を利用した訓練や、後にフォート・ユースティスに移設される陸軍初のロープウェイの試験が行われました。このロープウェイは、船舶が近づきにくい地点や車両の通行が困難な場所での貨物輸送を可能にすることを目的としていました。キャンプ・ウォレス周辺の土地は、1970年代以降、テーマパークやリゾートが開発されるなど、目覚ましい発展を遂げています。

1923年、キャンプ・アブラハム・ユースティスはフォート・ユースティスへと昇格し、恒久的な軍事施設となりました。一時期は禁酒法時代の連邦刑務所としても使用されましたが、その後は再び軍事訓練施設として活用されるようになります。

第二次世界大戦中の1940年には沿岸砲兵の補充兵訓練が再開され、1943年にはイギリス陸軍のカリブ海連隊が創隊されました。戦後、1946年にはニューオーリンズから輸送学校が移設され、フォート・ユースティスは陸軍における輸送関連訓練の中心地としての地位を確立しました。軍用鉄道、海上輸送、水陸両用作戦など、様々な輸送技術の訓練が行われました。

しかし、2005年のBRAC（基地再配置および閉鎖）勧告に基づき、2010年に輸送学校（改称後、アメリカ陸軍輸送学校およびセンター）はバージニア州のフォート・リーへ移転しました。これと同時に、フォート・ユースティスはラングレー空軍基地との統合を経てラングレー・ユースティス統合基地の一部となり、フォート・モンローの閉鎖に伴いTRADOCがここに移駐してきました。基地の管理業務は、空軍の第633航空基地団、現在は第733任務支援群が担っています。

フォート・ユースティス沖のジェームズ川には、連邦海事局の国防予備船隊の一部が停泊しており、「幽霊船隊」とも呼ばれています。老朽化が進んだ船舶も多く、環境への影響が懸念されていますが、2000年以降、順次解体が進められています。

輸送科は、1986年に陸軍連隊システムに編入され、職種のモットーである「Spearhead of Logistics（兵站の穂先）」を冠した連隊紋章が制定されました。フォート・ユースティスにあるアメリカ陸軍輸送博物館では、陸軍の輸送に関する歴史や装備品が展示されており、その功績を後世に伝えています。

現在、フォート・ユースティスにはTRADOCのほか、第128航空旅団、第7輸送旅団など、多様な部隊や組織が所在し、アメリカ陸軍の作戦遂行能力を支え続けています。

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