フォード・コスワース・CRエンジン

フォード・コスワースCRエンジン：F1を駆け抜けた名機

フォード・コスワースCRエンジンは、コスワース社がフォード社の支援を受けて開発した、フォーミュラ1（F1）用V型10気筒エンジンです。1999年から2006年にかけて、複数のF1チームに搭載され、その性能と歴史はF1の歴史に深く刻まれています。本稿では、CRエンジンの開発経緯、スペック、そして記録について詳細に解説します。

開発の経緯と歴史

CRエンジンは、それまで使用されていたZETEC-Rエンジンの後継として、1994年から開発が始まりました。ワークス供給用のエンジンとして開発されたCRエンジンは、1999年にスチュワートチームでデビュー。この年、ジョニー・ハーバート選手がヨーロッパGPで優勝、ルーベンス・バリチェロ選手がフランスGPでポールポジションを獲得するなど、鮮烈なデビューを飾りました。しかしながら、CRエンジンによる優勝は、このヨーロッパGPでの1回のみという結果に終わっています。

その後、スチュワートチームを買収したジャガーチームへの供給を経て、アロウズ、ミナルディ、ジョーダンと、複数のチームに供給されるようになりました。特に2003年ブラジルGPでは、ジョーダンチームのジャンカルロ・フィジケラ選手が、悪天候の中見事優勝を飾りました。これは、フォード・コスワースにとってF1での最後の勝利となりました。

2004年末、フォード社がジャガーとコスワースを売却したことで、将来のF1へのエンジン供給が危ぶまれました。しかし、その後は問題なく供給が継続され、ミナルディ、レッドブル、トロ・ロッソといったチームに、CK2004、TJ2005、TJ2006といったCRエンジンをベースにした改良型エンジンが供給されました。これらのエンジンは、ベースであるCRエンジンを改良、進化させたもので、各チームのニーズに合わせたチューニングが施されていました。TJ2006は、V8エンジンへの移行が難しいチーム向けに、V10エンジンのレギュレーションに則った仕様で提供されています。

エンジンのスペック

CRエンジンシリーズは、いくつかのバージョンが存在し、それぞれ細かい仕様が異なっています。共通点はV型10気筒、72度または90度のバンク角、2998ccの排気量です。最高回転数は多くのバージョンで18,000回転に達し、高い出力特性を実現していました。材質にはアルミニウム合金が用いられ、軽量化と高剛性を両立。コスワースのレーシング技術が凝縮されたエンジンであることが分かります。

具体的には、CR-1からCR-6、CK2004、TJ2005、TJ2006と、様々なバージョンが存在し、搭載チームや使用年によって仕様が異なっていました。燃料や潤滑油も、テキサコ、エルフ、カストロールなど、チームによって様々でした。それぞれのバージョンにおいて、細かい改良が加えられ、性能向上や信頼性向上に努められています。

記録

CRエンジンは、F1において1勝、1回のポールポジションを獲得しました。1999年のヨーロッパGP優勝（ドライバー：ジョニー・ハーバート、コンストラクター：スチュワート・フォード）、フランスGPのポールポジション（ドライバー：ルーベンス・バリチェロ、コンストラクター：スチュワート・フォード）がその記録です。ドライバーズチャンピオンシップ、コンストラクターズチャンピオンシップでの優勝はありませんでしたが、F1の歴史において重要な役割を果たしたエンジンであることは間違いありません。

供給チーム

CRエンジン、およびその派生型エンジンは、以下のチームに供給されました。

スチュワート (1999年)
ジャガー (2000年-2004年)
アロウズ (2002年)
ジョーダン (2003年-2004年)
ミナルディ (2003年-2005年)
レッドブル (2005年)
* スクーデリア・トロ・ロッソ (2006年)

これらのチームは、CRエンジンの性能を活かし、F1で活躍しました。フォード・コスワースCRエンジンは、F1の歴史において重要な位置を占めるエンジンとして、今もなお語り継がれています。

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