フォード・トーラスX

トーラスXは、アメリカの自動車メーカーであるフォード・モーターがかつて製造・販売を行っていた自動車です。

このモデルは、当初2005年モデルとして市場に投入された際には「フリースタイル」という名称で販売されていました。しかし、2008年モデルへの更新に伴い、車名が現在の「トーラスX」へと変更されることになります。その位置づけとしては、フォードの主力セダンであったトーラスおよび同ワゴンの後継車種群の一つとして開発されました。

フリースタイル（後のトーラスX）は、2004年1月に開催された北米国際オートショーで、同じくトーラスの後継とされたセダンモデルのファイブハンドレッドと共に発表されました。そのボディスタイルは、一般的なステーションワゴンよりも全高を高く設定したクロスオーバー的な外観が特徴です。室内空間においては、3列シートが採用されており、乗車定員は6名または7名に対応していました。これらのシートは多彩なアレンジが可能で、これにより優れた居住性と、荷物の積載など多様な用途に対応できる実用性を両立していました。

車両開発にあたっては、スウェーデンの自動車メーカーであるボルボが開発した「フォード・D3プラットフォーム」が基盤として使用されました。このプラットフォームは、ボルボのSUVモデルであるXC90などにも採用された実績を持つ堅牢な設計でした。

登場初期のパワートレーンは、3.0リットルのDOHC（ダブルオーバーヘッドカムシャフト）V型6気筒エンジンに、ZF製の無段変速機（CVT）が組み合わされた組み合わせのみが設定されていました。駆動方式については、前輪駆動（FF）と、悪路や滑りやすい路面での走行安定性を高める全輪駆動（AWD）の両方が用意されていました。

フリースタイルは、同じくD3プラットフォームを使用するセダンのファイブハンドレッド、およびマーキュリーブランドで販売されたモンテゴと姉妹車の関係にありました。また、マーキュリーからはフリースタイルの姉妹車となるコンセプトモデル「メタワン (Meta One)」が2005年の北米国際オートショーに出展される計画もありました。このコンセプトはツインターボ付きV6ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載していましたが、残念ながら市販化には至りませんでした。

2007年2月には、シカゴオートショーにてフェイスリフトを受けた2008年モデルが発表されました。このモデルイヤーの変更は、フォード全体の製品名称戦略の転換と連動していました。その結果、D3プラットフォームを採用していた3モデル全てが名称を改められることになります。すなわち、ファイブハンドレッドは馴染み深い「トーラス」の名を復活させ、モンテゴは「セーブル」に回帰し、そしてフリースタイルは新たに「トーラスX」という名称を与えられたのです。

名称変更と同時に、パワートレーンも刷新されました。従来の3.0L V6エンジンとCVTの組み合わせに代わり、排気量を拡大した3.5リットルのDOHC V型6気筒エンジンに、アイシンAW（現在のアイシン）製の6速オートマチックトランスミッションが搭載されました。

しかし、トーラスXは比較的短命なモデルとなりました。2009年1月の北米国際オートショーでフルモデルチェンジされた新型トーラスが発表されましたが、トーラスX自体はモデルチェンジされることなく、2009年モデルをもって生産・販売が打ち切られました。

なお、オーストラリアのフォードが開発・販売している「フォード・テリトリー」というモデルは、そのスタイリングがトーラスXと類似している点がありますが、プラットフォームを含め設計は全く異なり、両車に関連性はありません。

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