フォード・プリフェクト

フォード・プリフェクト：イギリスを代表する小型車の歴史

フォード・プリフェクトは、イギリスのフォード社が1938年から1961年にかけて生産した小型乗用車です。その歴史は、戦前の保守的なデザインから戦後のモダンなスタイルへの変遷、そしてモータースポーツにおける人気など、イギリスの自動車史における重要な位置を占めています。

戦前モデル：伝統と堅実性の時代 (E39A, 1938-1949)

1938年、それまでの「ベビー・フォード」の後継車として登場したプリフェクトは、初期モデルでは従来のデザインを踏襲していました。頑丈な構造とシンプルな設計は、耐久性と信頼性を重視したイギリスの自動車文化を反映していました。前後横置きリーフスプリングと機械式ブレーキを採用するなど、保守的な設計が特徴です。搭載されたのは、イギリスの馬力税に有利な1172ccのサイドバルブ4気筒エンジン。クランクハンドルによる始動も可能でした。第二次世界大戦中の生産中断をはさみながらも、戦後しばらくはマイナーチェンジを繰り返しながら生産されました。

戦後モデル：モダンデザインへの進化 (E493A, 100E, 107E, 1949-1961)

戦後、フォード社は中型車「コンサル」「ゼファー」でOHVエンジンやモノコック構造、そしてマクファーソンストラット式サスペンションといった先進技術を採用しました。この技術革新はプリフェクトにも波及し、1953年登場の100E型では、旧式のセパレートフレームからモダンなポンツーン型モノコック構造へと生まれ変わりました。サスペンションはフロントがコイル式マクファーソンストラット独立懸架となり、ブレーキはガーリング製の油圧ブレーキに変更、性能と安全性が大きく向上しました。しかし、エンジンは改良されたとはいえ、旧式のサイドバルブ式が踏襲されました。アングリアの4ドア版という位置づけでしたが、デザインは独立したものとなりました。

1959年登場の最終モデル107Eでは、アングリア105Eに搭載された1000ccのOHVエンジンと4速ギアボックスを搭載。プリフェクトとして初めてOHVエンジンを採用したモデルとなりました。これは、新型アングリアに4ドアモデルが設定されなかったため、旧来のボディを流用した結果でした。

モータースポーツと改造文化

軽量なボディと扱いやすいエンジン、そして改造しやすい構造は、イギリスで盛んだったアマチュアモータースポーツ愛好家から高い人気を集め、改造ベースとして広く利用されました。その高いポテンシャルは、この車の魅力のひとつでした。

世界への展開

プリフェクトはイギリス国内のみならず、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、カナダなど世界各国で販売されました。オーストラリアでは現地生産も行われ、独自のユーティリティボディ（ピックアップトラック）も存在しました。カナダ向けには左ハンドル仕様が製造され、ラトビアでもライセンス生産が行われました。

文化への影響

イギリスのSFコメディ「銀河ヒッチハイクガイド」では、主人公の車が「フォード・プリーフェクト」という名前で登場し、この車の知名度をさらに高めました。

まとめ

フォード・プリフェクトは、戦前の堅実な設計から戦後のモダンなスタイルへの進化を遂げた、イギリスを代表する小型車です。その歴史は、イギリスの自動車産業や文化を理解する上で重要な要素となっています。保守的な設計から始まった歴史、世界への進出、そしてフィクション作品への登場など、様々な側面から見ていくと、この車の魅力がより深く理解できるでしょう。

もう一度検索