フォールリヴァー伝説

フォールリヴァー伝説

『フォールリヴァー伝説』（Fall River Legend）は、1948年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で初演されたバレエ作品です。これはモートン・グールドが音楽を手掛け、アグネス・デ＝ミルが振付を行った1幕（プロローグ付き8場）からなる作品です。本作は、1892年に発生した実際の殺人事件「リジー・ボーデン事件」にインスパイアされたもので、デ＝ミルの代表作に数えられています。

作品の背景

1892年の8月4日、マサチューセッツ州フォールリヴァーにおいて、アンドリュー・ボーデンとその妻アビーが斧で惨殺される事件が発生しました。事件の第一発見者であった娘リジーが容疑者として名前が挙がりますが、最終的には証拠不十分から無罪となりました。本作では、この虐殺の背景やリジーの心理を深く掘り下げています。

デ＝ミルは、音楽家モートン・グールドに新しいバレエのための音楽を依頼することを決定しました。彼女は以前にグールドの作品には接していなかったものの、彼の音楽への期待感を抱いていました。作品の開幕では、リジーが実父と継母を殺害したとして告発され、物語は彼女の過去を振り返る形で進行します。

あらすじ

物語は、リジーが告発を受けるシーンから始まります。彼女の幸せな幼少期が描かれますが、実母の死をきっかけに家庭は崩壊してしまいました。新たに迎え入れられた継母との関係は緊張を孕み、リジーは孤独に苛まれます。彼女の精神状態は次第に不安定になり、継母はリジーが正常ではないと指摘します。

若い牧師がリジーに手を差し伸べますが、彼女は実父と継母の圧迫に苦しみます。ある晩、リジーが斧を持って家に現れると、父と継母は恐れる一方でリジーの心には危険な思考が渦巻いていました。牧師とのダンスを通じて少しの心の安らぎを得るものの、彼女の運命は暗転していきます。

舞台が再び明るくなると、惨劇が巻き起こったことが明らかになります。リジーの心の叫びは観衆に届かず、彼女は悲劇の中に孤立していきます。

音楽と公演履歴

『フォールリヴァー伝説』の音楽は16曲から構成されています。プロローグから始まり、様々な楽章、特に「斧」という楽曲が作品のテーマを象徴しています。デ＝ミルの作品は、他のバレエ団でも数回上演されており、例えば1983年のハーレム・ダンス・シアター、1994年のバーミンガム・ロイヤル・バレエ団などで再演されました。また、1975年には南アフリカでフランク・スタッフがこの物語をバレエ化しています。

総じて、フォールリヴァー伝説は、悲劇的な事件を背景に持つ作品であり、19世紀末のアメリカにおける女性の抑圧と闘いを映し出しています。作品の最後では、群衆が退場し、リジーと牧師だけが残り、絞首台の前に立つ彼女の姿が印象的に描かれ、物語は深い余韻を残して終了します。

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