フォーン・ブース

フォーン・ブース：電話ボックスからの脱出不可能

2002年、アメリカで製作されたサスペンス映画『フォーン・ブース』は、81分間の緊張感あふれる展開で観客を魅了する作品です。監督はジョエル・シュマッカー、主演はコリン・ファレル、そしてキーファー・サザーランド、フォレスト・ウィテカーといった実力派俳優が脇を固めています。舞台はニューヨークの街中。物語の中心となるのは、電話ボックスという閉鎖的な空間です。

主人公は、スチュワート・シェパード（スチュー）。彼は、口先のうまいメディアコンサルタントとして成功を収めてきました。ある日、彼は電話ボックスで女優志望の女性パムとの電話を終えた直後、再び電話が鳴ります。受話器を取ると、電話の向こうから謎の声が聞こえてきます。男はスチューの個人情報を事細かに語り、電話ボックスから一歩も出るな、と脅迫します。

男は、過去にスチューとトラブルがあった売れない役者だと名乗ります。そして、パムやスチューの妻に電話をかけるよう執拗に要求し続けます。一方、電話ボックスの外では、娼婦が電話を使わせてほしいとスチューをせまります。彼女は仲間を連れてきて、スチューに暴力を振るいますが、スチューは汚い言葉で追い払います。

業を煮やしたスチューが電話を切ろうとすると、男は「電話を切れば殺す」と脅迫します。男はビルの窓からスチューを狙撃していると主張し、弾を装填する音や、近くのロボットを銃で破壊する様子を聞かせます。スチューは男の言葉に半信半疑ながらも、胸に銃のレーザー照準が向けられると、恐怖に慄きます。

電話を切ることも、電話ボックスから出ることもできなくなったスチューは、娼婦たちが連れてきた用心棒とも衝突します。用心棒がスチューに暴力を振るうと、電話の男は「助けようか？」と尋ねてきます。一度は拒否するスチューですが、耐えかねて「イエス」と答えた瞬間、用心棒は倒れ絶命します。娼婦たちは悲鳴を上げ、スチューが用心棒を殺したと警察に通報します。

電話の男は、警察の指示に従わないようにスチューに忠告しますが、スチューは銃を持っていると疑われたまま、警察に囲まれてしまいます。スチューは、絶体絶命の状況に追い込まれるのです。

この映画は、閉鎖空間における心理的な恐怖を見事に描き出しています。コリン・ファレルは、徐々に追い詰められていくスチューの葛藤を、繊細な演技で表現しています。キーファー・サザーランド演じる電話の男の不気味な声も、作品全体の緊張感を高めています。

また、2002年秋に公開予定だった本作は、同年10月にアメリカで発生した狙撃事件の影響で、2003年4月への公開延期を余儀なくされました。この事実は、映画の内容と現実が重なり合うという、興味深い側面を物語っています。

『フォーン・ブース』は、スリルとサスペンスに満ちた、忘れられない映画体験を提供してくれるでしょう。電話ボックスという限られた空間の中で展開される、緊迫感あふれる物語は、観る者の心を掴んで離しません。巧みな演出と俳優たちの熱演によって、最後まで目が離せない作品に仕上がっています。電話ボックスという閉鎖空間、そして巧みに張り巡らされた謎解き、そして現実とフィクションの境界線を曖昧にするような展開は、まさに傑作サスペンスと言えるでしょう。

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