フキヤガエル属

フキヤガエル属（Phyllobates）は、ヤドクガエル科に分類されるカエルのグループで、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、コロンビアといった中米地域に分布しています。この属は、1841年にフランスの動物学者アンドレ・マリー・コンスタン・デュメリルとガブリエル・ビブロンによって設立されました。

属名の由来

属名であるPhyllobatesは、ギリシャ語の「葉」を意味する"phyllo"と「歩く者」を意味する"bates"を組み合わせた言葉で、「葉の上を歩く者」を意味します。これは、彼らが生息地で葉の上を移動する様子から名付けられたと考えられます。

特徴的な毒

フキヤガエル属の最も特徴的な点は、その強力な毒です。特に、バトラコトキシン（BTX）という毒素は、ヤドクガエル科の中でもフキヤガエル属の野生種のみが保有しています。この毒は神経毒であり、非常に強力で、特にココエフキヤガエル、ヒイロフキヤガエル、キイロフキヤガエルの3種は強い毒を持つことで知られています。中でもキイロフキヤガエルは、他の2種に比べて約27倍もの猛毒を持つとされています。

興味深いことに、この毒は彼らが摂取する野生の昆虫に由来します。そのため、飼育下で餌を変えると、フキヤガエル属のカエルは毒素を失います。毒を失うまでの期間は個体差がありますが、最長で約2年間の飼育で毒素が失われるとされています。この現象は、野生環境と飼育環境の差が、カエルの生理機能に大きな影響を与えることを示唆しています。

分類

フキヤガエル属は、以下の5種で構成されています。

ココエフキヤガエル (Phyllobates aurotaenia)
ヒイロフキヤガエル (Phyllobates bicolor)
キイロフキヤガエル (Phyllobates terribilis)
Phyllobates lugubris
Phyllobates vittatus

これらの種は、それぞれ異なる生息環境や形態、毒性を持っています。フキヤガエル属は、生物多様性の観点からも非常に重要なグループであり、その生態や毒のメカニズムは、現在も研究が進められています。

まとめ

フキヤガエル属は、その特徴的な毒と、中米という限られた地域に生息していることから、生物学的に非常に興味深い対象です。彼らの毒は、自然界における生存戦略の一つであり、その生態系の複雑さを象徴しています。また、飼育下では毒を失うという現象は、自然環境と生物の関係について深く考えさせられる点です。

参考文献

ティム・ハリデイ『世界のカエル大図鑑』吉川夏彦・島田知彦・江頭幸士郎 監修、倉橋俊介・坂東智子・日野栄仁・世波貴子 訳、柏書房〈第1刷〉、2020年（原著2016年）。ISBN 978-4-7601-5235-3。

参考データベース

アンフィビアウェブ / AmphibiaWeb (英語)
世界の両生類の種 / Amphibian Species of the World (英語)

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