フクロザメ

フクロザメ (Mollisquama parini)

フクロザメは、ヨロイザメ科のフクロザメ属に分類されるサメで、その学名はラテン語の「mollis（柔らかい）」と「squama（鱗）」から成り立っています。このサメは、太平洋南東部のチリ北部沖、ナスカ海嶺上の深度330メートル付近で最初に発見されました。その際に得られたタイプ標本は、全長40センチメートルの未成熟の雌個体です。

生息域

フクロザメは、チリ北部沖の寒流の影響を受ける海域に生息しており、ナスカ海嶺の付近で捕まえられました。深海の環境に適応しているため、深度330メートルという特殊な生息場所が確認されています。どのような環境に生息しているのかを調査することは、この生物の生態を理解する上で重要です。

形態的特徴

フクロザメの最も注目すべき特徴の一つは、胸鰭の基部上方に位置する袋状の器官です。この器官にはスリット状の開口部があり、同じような構造を持つ他の軟骨魚類はこれまでに知られていません。ただし、アカリコビトザメは腹部に発光液を分泌する器官を持つため、類似性があると言えるかもしれません。

このサメの吻は円く、短い形状をしています。また、第一と第二の背鰭は同様の形状と大きさであり、第一背鰭は腹鰭の直前、第二背鰭は腹鰭のすぐ後ろに位置しています。尾鰭の下葉は特に発達しており、上顎の歯は細長くて直立しています。一方、下顎の歯は上顎のものよりも幅広で、互いに接近して配置されています。これらの歯はそれぞれ1つの尖頭を持っています。体全体の色は黒褐色で、鰭の縁は淡い色をしています。

近縁種と最近の発見

この種に近縁なサメとしては、アメリカンポケットシャーク（Mollisquama mississippiensis）が挙げられます。フクロザメは最初の発見から数十年の間、標本が得られていなかったこともあり、非常に珍しい存在とされています。しかし、2015年になって、2010年にメキシコ湾で捕獲された個体から、最大深度580メートルの中層トロールによって14センチメートルの雄が新たに見つかりました。最初の発見場所と新たに見つかった場所の環境が大きく異なるため、フクロザメは広範囲にわたって分布している可能性があると考えられていました。

しかし、その後2019年の調査で、このメキシコ湾の雄は異なる種であると確認され、フクロザメ属には現在2種類しか存在しないことが明らかになりました。フクロザメの識別には、下顎周縁部のくぼみ、16箇所のphotophore aggregation、上顎の歯にlabial-surface ridgeがないこと、下顎の歯のbasal sulcusの弱さまたは欠如も含まれます。

系統的特徴

遺伝子解析の結果から、フクロザメはヨロイザメ科の中でもヨロイザメやダルマザメと深い関係にあることが判明しています。これにより、フクロザメはこの家族の中でも特殊な進化を遂げてきたことが示唆されており、今後の研究によってさらなる理解が深まることが期待されています。

もう一度検索