フッ化アンモニウム

フッ化アンモニウムとは

フッ化アンモニウム（Ammonium Fluoride）は、フッ化水素とアンモニアが反応して生成される塩であり、工業や医療などさまざまな分野で利用されている重要な化合物です。この物質は、正塩と水素塩の二つの形態が存在し、水素塩はフッ化水素アンモニウム（Ammonium Hydrogenfluoride）と呼ばれます。

性質

フッ化アンモニウムの特異な性質の一つは、分子内の強い水素結合にあります。これは、他のハロゲン化アルカリとは異なる構造を形成し、安定した性質をもたらします。屈折率は1.315であり、水に対しては高い溶解性を持ち、湿気を吸収しやすい潮解性も示します。しかし、エチルアルコールにはわずかに溶け、アセトンや液体アンモニアには溶解しない特徴があります。また、この物質は毒性があり、ガラスを腐食させるため、安全な取り扱いが必要です。そのため、ポリエチレンの容器に保存されるのが一般的です。

合成方法

フッ化アンモニウムの製造方法はいくつかありますが、最も一般的な方法は、氷冷されたフッ化水素酸にアンモニアを吹き込むことによって生成されます。さらに、塩化アンモニウムとフッ化ナトリウムの混合物、または硫酸アンモニウムとフッ化カルシウムの混合物を加熱し、昇華させることによっても合成することができます。注意すべき点は、100℃以下での加熱によってフッ化アンモニウムの多くが熱分解することであり、そのため水溶液を濃縮しても正塩はクリスタルとして析出しないことが多いです。この分解反応には、NH₄Fが生成物として見られます。

利用用途

フッ化アンモニウムはさまざまな用途に利用されています。医療分野では消毒剤として、また金属の表面処理用化学物質としても広く使用されています。さらに、発酵工業におけるホースや導管の消毒にも使用されるため、その特性が多方面で役立っています。木材の防腐処理にも使われることから、工業から家庭まで幅広い領域で重宝されています。

参考文献

• - 長倉三郎 ほか（編）『岩波理化学辞典』第5版 CD-ROM版、岩波書店、1999年。ISBN 4-00-130102-4
• - 藤本昌利『世界大百科事典』CD-ROM版、平凡社、1998年。ISBN 978-4582040029

関連項目

• - アンモニア
• - フッ化水素

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