フヤラ

フヤラ：スロバキアの伝統木管楽器

フヤラ (fujara) は、スロバキアを代表する民族楽器であり、その独特の音色と演奏方法は、世界中から注目を集めています。2005年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、スロバキアの文化遺産として大切に守られています。

フヤラの構造と奏法

フヤラは、長さ1.2メートルから2.1メートルにもなる長い木製の管楽器です。一般的な長さは約1.7メートルで、縦に構えて演奏します。管は二つの部分からなり、短い方の管には吹口、長い方の管の上部にはリコーダーのような吹き口、下部には3つの音孔があります。音孔は、左手の中指、右手の親指、右手の中指で押さえます。

他の木管楽器と異なるのは、倍音の巧みな活用です。フヤラは、息の強弱を調整することで、基音から第8倍音まで容易に奏でることができます。音孔は3つしかないため、音高の変化は主に倍音によって実現されます。

3つの音孔と複数の倍音を組み合わせることで、長音階を演奏します。例えば、G管のフヤラでは、第2倍音から第8倍音までを使い、2オクターブの音域（G3～G5）を奏でることが可能です。スロバキアの民謡では、D4～D5の音域をミクソリディア旋法で演奏することが一般的です。基音は、鼻歌のような効果を出すために使用されることもあります。

フヤラの歴史と演奏形態

フヤラは、もともとスロバキア中央部のポドポリャニエ地方の羊飼いたちによって演奏されていました。19世紀から20世紀にかけて、羊飼い以外にも広まり、現在ではスロバキア全土で愛されています。

演奏形態は、独奏や3～7人の合奏など様々です。歌の伴奏楽器としても用いられ、曲の導入部では高次の倍音を使った印象的な序奏がしばしば用いられます。

関連楽器

フヤラのように高次の倍音を利用した笛は、オーバートーンフルートと呼ばれ、北欧や東欧などに広く分布しています。スロバキアのコンツォフカ、北欧の柳笛、ルーマニアやウクライナのティリンカなどが、フヤラと似た特徴を持つ楽器として挙げられます。

まとめ

フヤラは、その独特の形状、奏法、そして生み出される美しい音色によって、スロバキアの文化を象徴する存在となっています。長い歴史と伝統を受け継ぎ、現代でも多くの人々に愛され、演奏され続けているフヤラは、まさにスロバキアの宝と言えるでしょう。その音色を実際に耳にすることで、スロバキアの豊かな文化をより深く理解できることでしょう。

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