フューザー (天文学)

フューザー (Fusor)

フューザーは、天文学における天体分類をより厳密に行うために提案された新しい概念および用語です。この用語は、カリフォルニア大学バークレー校の天文学者ギボール・バスリ氏によって提唱され、国際天文学連合の場で提示されました。その主な目的は、従来の天体分類、特に質量が比較的小さい天体と恒星との間の境界領域における術語体系の曖昧さを解消し、明確な定義を与えることにあります。

バスリ氏の定義によれば、フューザーとは「生涯を通じてその核（中心部）で核融合反応を持続的に行う天体」を指します。この定義は、天体の進化のいずれかの段階で核融合を起こすことを条件としており、特定の種類の核融合に限定されるものではありません。これには、より高温・高圧で起こる水素の核融合だけでなく、比較的低い温度・圧力で可能な重水素の核融合も含まれます。

このフューザーという定義を質量で表現した場合、その最低質量は約13木星質量程度となります。この質量は、中心部で重水素の核融合が安定して行われるために必要な条件を満たす下限の質量に相当します。興味深いのは、この値が、よりエネルギー効率の高い水素の核融合を持続的に行うために必要な約60木星質量という値に比べて著しく小さいことです。従来の分類では、重水素核融合は行うものの、水素核融合を行うには質量が足りない天体（褐色矮星などがこれに含まれる）の位置づけが曖昧になりがちでした。フューザーという用語は、こうした核融合を行う全ての天体を包括的に捉えようとするものです。

さらに、フューザーの概念は、天体が「恒星」と見なされるかどうかの境界とも関連付けられます。一般的に恒星とは、自身の中心部で進行する水素核融合によって発生する熱エネルギーが、天体自身の重力による収縮を内側から支え、流体静力学的平衡を保っている天体を指します。しかし、質量が約75木星質量以下の天体では、中心部で十分な温度・圧力が達成されず、水素核融合によるエネルギー発生だけでは自身の重力収縮を完全に支えきることができません。このような天体は、たとえ一時的に核融合を起こしたとしても、古典的な意味での「恒星」とは区別されます。

フューザーという用語は、この約13木星質量から約75木星質量未満という、核融合は起こるが恒星ではない、あるいは水素核融合を安定して行わない天体の範囲を包含しうる概念として提案されています。これにより、単に質量だけでなく、「核融合を行うか否か、そしてどのような核融合を行うか」という物理的プロセスに基づいた分類が可能となります。

この用語が導入されることで、太陽系外惑星（木星型惑星のような大質量惑星も含む）、褐色矮星、そして最小質量の恒星といった、これまで境界が曖昧だった天体群を、その物理的な性質、特に内部でのエネルギー生成メカニズムに基づいてより明確に区別できるようになることが期待されています。

関連する天体概念としては、核融合を行わない木星型惑星や太陽系外惑星、恒星の形成過程でより微小な要素である微惑星、単独で漂うプラネターなどが挙げられますが、フューザーはこれらの用語と異なり、内部での核融合の存在を決定的な基準としています。フューザーという概念の普及は、将来の天体探査や理論研究において、天体の性質をより正確に記述し、議論を進める上で重要な役割を果たす可能性があります。

フューザーの概念は、特に太陽系外惑星の探査が進み、多様な質量を持つ天体が発見される現代天文学において、天体分類学に新たな視点をもたらす試みとして注目されています。将来、この用語が広く受け入れられれば、天文学における天体分類の共通認識が一層明確になることが期待されます。

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