フライドポテト自動販売機

フライドポテト自動販売機

フライドポテト自動販売機とは、利用者の操作に応じてその場で温かいフライドポテトを調理・提供する機器です。単に作り置きを保温するのではなく、注文を受けてから加熱調理を行う点が大きな特徴と言えます。

この種の自動販売機は、1960年代中頃から様々な企業によって開発への取り組みが始まりました。技術の進歩と共に、提供されるフライドポテトの種類や調理方法にも多様な方式が登場しています。

調理方式とポテトの種類

提供されるフライドポテトの形状としては、すでにカットされ冷凍されたものや、内部でマッシュポテトの粉末から成形されるタイプなどがあります。調理方法も機種によって異なり、伝統的な油で揚げるディープフライ方式、または温風を用いて加熱する方式が主に用いられています。これにより、利用者は自動販売機でありながら、揚げたてや温かいポテトを楽しむことができます。

初期開発の事例

フライドポテト自動販売機の実用化に向けた試みは、比較的早い段階から見られました。例えば、オーストラリアのプレシジョン・フライ・フーズ社（現在は存在しない企業）は、1982年に「ミスター・フレンチフライ」という名称で意匠登録を行っています。この機種は、投入からわずか60秒で揚げたてのポテトを提供することを可能にし、価格は当時の20セント硬貨3枚でした。提供されるカップの底面には、塩の小袋が付属するという工夫も見られました。

アメリカでも、1970年代には既にフライドポテト自動販売機の存在が報告されています。ハウザー・ヴェンディング社が1980年頃から展開した「ミスター・クリスピーズ」という機種は、粉末成形ではない生のポテトを使用し、約185℃のひまわり油で約40秒間揚げるという本格的なものでした。この機種は、約500食の調理ごとに油が自動的に交換される仕組みを備え、さらに故障時には自動停止機能や消火機能も搭載するなど、安全面への配慮もなされていました。この時期までに、アメリカでは冷凍調理済みポテトを温風で温めるタイプや、粉末から内部で成形して揚げるタイプなど、様々な技術を試みた機種が登場しています。

2000年代以降の進化

2000年代に入ると、さらに技術が高度化し、より洗練されたフライドポテト自動販売機が登場しました。中国深圳のBeyondte Technology社が開発に着手し、後にベルギーのBreaktime Solutions社に買収されて改良が進められた「ロボ・フレンチフライ」はその代表例です。2013年にはブリュッセルで実地試験が行われ、約95秒で熱々のポテトを提供しました。1食あたり3.50米ドル相当の価格で販売され、単にポテトだけでなく、塩、ケチャップ、マヨネーズ、ハリッサといった多様なソースが付属したことも特徴です。この機種は、本体重量が340kgと大型で、植物油に加え、ベルギーで好まれる牛脂を揚げ油として使用できる設計でした。メンテナンスは人力で行われましたが、約150食ごとに内部清掃が必要でした。また、3重のフィルターを備えた換気システムにより、調理時の臭気対策も徹底されていました。その高度な機能から、『ニューヨーク・ポスト』紙によって「自動販売機のロールス・ロイス」と形容されたこともあります。

他にも、ロシアのE-Vend Technology社はアメリカの技術を使い、中国やイスラエルでフライドポテト自動販売機を製造しており、これは約45秒で冷凍ポテトを温風解凍して提供します。スロバキアのFotolook社も同様の自動販売機を販売しています。2015年には、オランダのヴァーヘニンゲン大学のチームが、冷凍ポテトを油で揚げる方式のプロトタイプを発表しました。この試作機は約2分で調理を行い、紙カップに入れて提供。ポテトが潰れたり折れたりするのを防ぐための専用ディスペンサーを採用するなど、細部にも工夫が見られました。

これらの事例は、フライドポテト自動販売機が長い歴史の中で、様々な技術的課題に取り組みながら進化を続けていることを示しています。利用者への迅速で高品質な提供を目指し、開発は今なお続けられています。

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