フラウィウス・タウルス・セレウクス・キュルス

フラウィウス・タウルス・セレウクス・キュルス（426年 - 441年頃）は、東ローマ帝国における重要な人物です。彼は、その多岐にわたる才能で知られており、政治家、詩人、哲学者として、またギリシア芸術の熱心な支持者として名を残しました。キュルスは、エジプトのパノポリス出身であったため、「パノポリスのキュロス」とも呼ばれています。彼は、テオドシウス2世（408年–450年 在位）の時代に、コンスタンティノープルで顕著な活躍を見せました。

キュルスは、皇后アエリア・エウドキアの庇護を受け、賛辞、エピグラム、叙事詩など、様々な文学作品を創作しました。彼は宮廷での要職を歴任し、426年頃にはコンスタンティノープルの首都長官に初めて任命されました。同年11月には、オリエンス道長官を兼任し、東ローマ帝国において皇帝に次ぐ権力を掌握しました。首都長官として、キュルスは行政言語からラテン語を排除し、ギリシア語を公用語として導入しました。これは、帝国の文化的な方向性を示す重要な転換点となりました。

キュルスは、コンスタンティノープルの発展にも大きく貢献しました。彼は街の美化に尽力し、街灯の設置、市壁の再建、そしてテオトコスに捧げる教会の建設を主導しました。この教会が建設された地域は、後にキュルスの名にちなんで名付けられました。さらに、コンスタンティノープル大学の創設にも関与し、学術の振興にも貢献しました。これらの業績により、キュルスは広く名声を得ました。

年代記者のゾナラスによれば、キュルスによる城壁の迅速な修復を見て、人々は「コンスタンティヌス（大帝）が建て、キュルスが復活させた」と称賛したと伝えられています。しかし、キュルスの人気が高まるにつれて、テオドシウス2世は脅威を感じ、441年8月に彼の全ての役職を剥奪しました。キュルスは異教への共鳴を理由に告発され、フリュギアへ追放されました。追放先で彼は聖職者となり、443年にはコテャエウムの司教に任命されました。しかし、この任命には裏があり、キュルスの前の4人の司教は、コテャエウムの住民によって殺害されていました。

450年にテオドシウス2世が亡くなると、キュルスは世俗に戻り、危険なコテャエウムからコンスタンティノープルへ帰還しました。彼は恩赦を受け、没収された財産も返還されたようです。その後、レオ1世の時代に亡くなるまで、彼は財産の大部分を慈善事業に費やしました。960年頃には、キュルスは登塔者ダニエルと親交を深めました。ダニエルがキュルスの下の娘アレクサンドリアに取り憑いた悪霊を祓ったことがきっかけとなり、その数年後には、ダニエルはキュルスの長女と共に何度か奇跡を起こしたと伝えられています。

キュルスの生涯は、政治、文化、宗教が複雑に絡み合った東ローマ帝国の時代を反映しています。彼の業績は、後世に大きな影響を与え、今日でも研究の対象となっています。

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