フラッシュフォワード (小説)

フラッシュフォワード

『フラッシュフォワード』（Flashforward）は、カナダの著名なSF作家ロバート・J・ソウヤーによって1999年に発表された小説です。この作品は日本語版が2001年にリリースされ、その後2010年に新装版が出版されました。ソウヤーは日本の訳者である内田昌之と親交があり、著者献辞には彼の名前も含まれています。作品名の「フラッシュフォワード」は、心理現象の「フラッシュバック」をもじったものであり、訳書には初版で「未来転位」という表現が、後に「時間転位」と変更されています。

あらすじ

物語は、2009年4月21日、ジュネーヴのヨーロッパ素粒子研究所（CERN）での実験から始まります。量子物理学者のロイド・シムコーとその同僚テオドシオス（テオ）・プロコピデスは、ビッグバンの瞬間の再現を目的とした実験を行っています。しかし、彼らが大型ハドロン衝突型加速器（LHC）で二つの原子核を衝突させた瞬間、突然全世界の人々が2030年10月23日、21年後の自分自身の姿を1分43秒間体験します。この間に、多くの事故や手術が中断され、多くの生命が失われるという悲劇が引き起こされます。

特に、CERNのエンジニアであるミチコ・コムラは、未来視の中で彼女の幼い娘を失う姿を見ることになります。ロイドはミチコと婚約しているものの、未来の自分は異なる女性と一緒にいる姿を見てしまい、運命の使者としての自分の未来を変えられるのかに苦悩します。一方、テオは自分は未来に殺されるという衝撃の予知を受け、運命を回避する手段を探ろうとするのです。

テレビドラマ版

この小説はその後、ABCによって『フラッシュフォワード』としてテレビドラマ化されました。このドラマは2009年9月24日に放映が始まりましたが、約8か月後の2010年5月27日に打ち切られ、全22話で完結します。視聴者数は初回に約1250万人を記録し、世界中で放送されています。日本では、2010年7月からAXNで独占放送され、2011年4月には地上波で放送が開始されました。

ドラマのストーリーは、全世界同時に意識を失う「ブラックアウト」と呼ばれる現象から始まります。その間、全人類が未来を6ヶ月先の2010年4月29日、午後10時に垣間見ることになります。これにより、様々な重大な事故が発生し、FBIロサンゼルス支局の捜査チームが事件の真相を追い求める様子が描かれています。

主な登場人物

• - マーク・ベンフォード：FBIの特別捜査官で、未来視による情報からブラックアウトの捜査を進めます。
• - ディミトリ・ノウ：マークのパートナーで、未来視で何も見ることができなかったため不安を抱えています。
• - オリヴィア・ベンフォード：マークの妻で外科医。未来視の中で知らない男性との関係を持つ自分を見て混乱します。
• - ロイド・シムコー：量子物理学者で、ブラックアウト中に自身の家族を失ったことに深く悩みます。
• - ブライス・ヴァーレイ：オリヴィアの下で働く研修医で、未来に希望を見出す人物です。
• - スタンフォード・ウェデック：FBI副支局長でブラックアウトの調査を指揮しています。

これらのキャラクターたちの運命は、彼らが見た未来によって大きく影響を受け、物語はサスペンスと心理的要素が交錯する展開へと進んでいきます。最終的に、この作品は運命や選択、未来に対する人間の相対的な感覚について問いかけるものとなっています。

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