フラニョ・トゥジマン

フラニョ・トゥジマン：クロアチア独立の父

フラニョ・トゥジマン（1922年5月14日 - 1999年12月10日）は、クロアチアの政治家であり、初代クロアチア共和国大統領として知られています。彼は、クロアチアをユーゴスラビアからの独立に導き、その後の国家建設において重要な役割を果たしました。

生涯と経歴

クロアチア北部の村で生まれたトゥジマンは、第二次世界大戦中にパルチザンとして共産党に参加しました。戦後、ユーゴスラビア人民軍で最年少の将軍となり、スポーツクラブの会長や大学学長を務めるなど、多岐にわたる経歴を持ちます。しかし、1972年と1981年には、クロアチア民族主義運動への参加容疑で逮捕され、軍の階級と勲章を剥奪されました。

クロアチア独立運動の指導者へ

1980年のヨシップ・ブロズ・チトーの死後、ユーゴスラビア連邦内ではセルビア至上主義的な民族主義運動が高まりました。これにより、多くのクロアチア人がセルビア官憲の圧力によって故郷を追われ、難民としてクロアチアへ流入しました。このような状況下で、トゥジマンは1989年にクロアチア民主同盟 (HDZ) を創設し、クロアチア独立運動の指導者として台頭しました。

1990年の自由選挙でHDZは勝利し、トゥジマンは大統領に選出されました。彼は、クロアチアの独立を宣言し、セルビア人組織との対立を深めていきます。1991年には、クロアチアはユーゴスラビアからの独立を宣言しましたが、セルビア人勢力との間で内戦が勃発しました。

内戦と独立

内戦初期、クロアチアは軍事的に劣勢でしたが、トゥジマンは外交努力を重ね、ドイツやアメリカとの関係を強化し、軍事支援を取り付けました。1995年には、クロアチア軍がセルビア人勢力に対する大規模な反攻作戦を展開し、国土の回復に成功しました。

大統領として

1992年、トゥジマンは大統領に再任され、クロアチアの独立を確固たるものとしました。しかし、その政治手法は独裁的であるとも批判されました。彼は、クロアチアの利益を最優先し、時には強硬な手段も辞さない姿勢を示しました。セルビアからは、大クロアチア主義を掲げる野心家として見なされています。

評価

フラニョ・トゥジマンは、クロアチア独立の父として、国内で広く尊敬されています。彼のリーダーシップの下、クロアチアはユーゴスラビアからの独立を達成し、国家としてのアイデンティティを確立しました。しかし、その一方で、彼の政治手法や民族主義的な言動は、批判の対象となることもあります。

トゥジマンは、単なる民族主義者ではなく、クロアチアの独立と安定を追求した人物でした。彼の遺産は、今日のクロアチアにも大きな影響を与え続けています。

参考文献
月村太郎『ユーゴ内戦ー政治リーダーと民族主義』東京大学出版会、2006年。

関連項目
大クロアチア

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