フラミンゴ (彫像)

シカゴのランドマーク：アレクサンダー・カルダーの巨大彫刻「フラミンゴ」

イリノイ州シカゴ、ダウンタウンのループ地区に位置する連邦政府センタープラザ。そのクルズィンスキービル正面に、アレクサンダー・カルダーによる圧倒的な存在感を放つ巨大彫刻「フラミンゴ」が鎮座しています。高さ16メートル、重さ50トンにも及ぶこの作品は、1973年に制作され、1974年に公開されました。

朱色の巨鳥と都市の調和

「フラミンゴ」は、鮮やかな朱色に塗られた鋼鉄製です。この色は後に「カルダーの赤」と呼ばれるようになり、周囲を囲む黒の鋼鉄製オフィスビル群、特にミース・ファン・デル・ローエ設計の連邦政府センタービルとの鮮やかなコントラストを生み出しています。カルダーは、この色彩の対比によって、近代的な都市空間の中に、力強く、そして繊細な生命感を吹き込んだといえるでしょう。

スタビル：動かないモビール

「フラミンゴ」は、カルダーが開発した「スタビル」と呼ばれる芸術形式に属します。スタビルとは、モビールのように空気を介して動くのではなく、完全に固定された抽象的な立体構造の作品です。その力強いフォルムは、あたかも巨大な鳥が羽を広げているかのような印象を与え、見る者を圧倒します。

パブリックアートの先駆け

「フラミンゴ」は、「パーセント・フォー・アート」プログラムに基づき、米国一般調達局が委託した最初の芸術作品です。このプログラムは、公共事業の予算の1％をパブリックアートに充てることを定めており、「フラミンゴ」はその先駆け的な存在と言えるでしょう。1973年4月23日にはシカゴ美術館で模型が公開され、翌1974年10月25日には本作品が公開されました。同日には、カルダー作のモビール「ユニバース」がウィリス・タワー（旧シアーズ・タワー）で公開され、「アレクサンダー・カルダーの日」として祝祭ムードに包まれた一日となりました。

人間的なスケールと構成主義の影響

「フラミンゴ」は、その巨大さにも関わらず、見る者は作品の下や周囲を自由に歩き回ることで、人間的なスケールで作品を体感することができます。自然界、動物界を想起させる有機的な形状は、それ以前の彫刻におけるより写実的な表現とは対照的で、現代彫刻の革新的な側面を示しています。また、小さな要素の組み合わせから成るその構造は、20世紀初期のロシアに端を発する構成主義の伝統を強く反映しているとも評価されています。連邦プラザ内の郵便局には、「フラミンゴ」の模型が展示されており、作品への理解を深める上で役立ちます。

シカゴの街に溶け込む芸術

「フラミンゴ」は、単なる彫刻作品としてだけでなく、シカゴの都市景観に不可欠な一部として存在しています。その鮮やかな色彩、力強いフォルム、そして近代建築との調和は、人々に感動と活力を与え続けています。シカゴを訪れる際は、ぜひこの現代彫刻の傑作を、間近で体感してみてください。

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