フラワー・トラベリン・バンド

フラワー・トラベリン・バンド：日本のロック史に名を刻む異色のバンド

1970年、日本の音楽シーンに彗星のごとく現れたフラワー・トラベリン・バンド。その歴史は、紆余曲折を経て、現在もなお伝説として語り継がれています。本稿では、彼らの輝かしい足跡を詳細にたどります。

結成から解散まで：カナダでの成功と日本の葛藤

バンドの原点は、内田裕也とザ・フラワーズに遡ります。メンバーチェンジを経て、ジョー山中（ボーカル）、石間秀樹（ギター）、上月ジュン（ベース）、和田ジョージ（ドラムス）という強力な布陣が完成。内田裕也のプロデュースの下、1970年2月に「フラワー・トラベリン・バンド」として再出発しました。

デビューシングル「Crash」発表後、アルバム『Anywhere』で本格的に活動をスタート。大阪万国博覧会での演奏をきっかけに、カナダのロックバンド、ライトハウスと出会い、カナダへと渡ります。

カナダでは精力的なライブ活動を展開し、高い評価を獲得。アメリカのアトランティック・レコードと契約、1971年4月にはアルバム『SATORI』をリリース。このアルバムとシングルカットされた「SATORI Part2」はカナダのチャートにランクインするなど大きな成功を収めました。ライトハウス、ELP、ドクター・ジョンといった著名なミュージシャンとの共演も経験し、国際的な舞台で活躍しました。

1972年3月、日本に帰国。サポートメンバーとして篠原信彦（キーボード）が加わり、全国ツアーを敢行。ローリング・ストーンズの前座を務める予定もありましたが、残念ながら実現しませんでした。1973年2月、アルバム『Make Up』を発表。同年4月、京都円山公園音楽堂でのコンサートをもって、惜しまれつつ解散しました。

再始動と更なる挑戦：伝説の復活

2007年11月、オリジナルメンバーによる再始動が発表され、大きな話題を呼びました。2008年には新アルバム『We are here』をリリース、全国ツアーも敢行。フジ・ロック・フェスティバル08への出演も果たし、バンドは再び注目を集めました。ニューヨーク、カナダでの公演も成功させ、海外での評価は依然として高く維持されています。2011年、ジョー山中の逝去という悲劇に見舞われましたが、残されたメンバーは活動を継続しています。

音楽性：東洋と西洋の融合、独自のスタイル

フラワー・トラベリン・バンドの音楽性は、内田裕也のビジョンによって大きく彩られています。全曲英語詞で歌われる楽曲は、東洋的な旋律を巧みに取り入れ、独特の世界観を創り出しています。当時の「日本語ロック論争」の中で、英語詞への挑戦は、彼らの革新的な姿勢を象徴するものです。

山中のハイトーンボイスと、石間のブルージーなスライドギターが織りなすサウンドは、無国籍的な魅力にあふれ、多くのリスナーを魅了しました。特に「SATORI」は、彼らの高い演奏力とオリジナリティを余すことなく表現した代表曲と言えるでしょう。

評価：先駆者としての存在感と絶え間ない影響力

カナダでの成功は、日本のロックバンドの海外進出における先駆的な事例として高く評価されています。しかし、日本の音楽シーンではフォークソング全盛の時代であり、彼らの高い音楽性にもかかわらず、商業的な成功は限定的でした。

時を経て、日立のCMソングへの楽曲採用や、デヴィッド・ボウイからの高い評価など、再評価の動きも見られます。Outrageによる楽曲カバーやトリビュートアルバムのリリース、映画『実録・安藤昇侠道伝 烈火』への楽曲提供、さらにはイギリスのロック史研究書における高い評価など、彼らの音楽は、現在もなお、多くの音楽家に影響を与え続けています。

メンバーと作品：バンドの歴史を彩る人々と音楽

長年にわたる活動の中で、多くのミュージシャンがフラワー・トラベリン・バンドに参加しました。それぞれの個性豊かなメンバーが、バンドの音楽に彩りを添えました。彼らの作品群は、日本のロック史に燦然と輝く、貴重な遺産と言えるでしょう。

フラワー・トラベリン・バンドは、時代の流れの中で浮き沈みを経験しながらも、独自の音楽性と高い演奏力で日本のロックシーンに大きな足跡を残しました。彼らの音楽は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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